むかしむかし、海辺にある小さなおうちにそれはそれはかわいらしい女の子が住んでいました。その女の子は、青い宝石のような目をした兵隊のお人形といつも一緒にいました。兵隊のお人形は優しいその女の子のことが大好きでした。ずっとずっと一緒にいたいと思っていました。でも、ある年のクリスマスに女の子へのプレゼントとしてピカピカしたお姫様のお人形がおうちにやってきたのです。

女の子はすぐに新しいお人形が一番のお気に入りになりました。お散歩をするときも遊ぶときもご飯を食べるときも寝るときもいつも一緒にいるようになりました。かつて女の子の一番のお気に入りだった兵隊のお人形は女の子と一緒にいる時間が少なくなりひどく悲しくなりました。くらいくらいおもちゃ箱の中でどんよりとした気持ちを抱きながらいつも一人で眠りに就いていました。

★ミ

星が堕ちてきそうなある夜、突然部屋の隅に置いてあったおもちゃ箱のフタが開かれました。眩しそうにした兵隊のお人形はすぐさま女の子のお母さんに身体を掴まれ、ベッドまで持っていかれました。どうやら女の子の一番のお気に入りだったお姫様のお人形がなくなってしまったようです。兵隊のお人形はすぐ自分がお姫様のお人形の代わりだということが分かったのですがそれでも兵隊のお人形は嬉しくてたまりませんでした。もう一度女の子と一緒にいられることが出来るなんて夢のようでした。

「おやすみ、ハウルくん」

優しくそう呟いた女の子は棚の上にあったランプを静かに消し、眠りに就きました。「ハウルくん」と呼ばれた兵隊のお人形もお腹の底が温かくなるような幸せを噛み締めながらゆっくりゆっくり眠りに就きました。静かな静かな夜空に浮かぶ月は、その二人を見守るかのように淡い光をぼんやりと放っていました。



パールの星屑が
瞬く間に

101219