I want to cry as painful .

この島に停泊してから十一日目の夜も十二日目の夜も、俺はなまえの店に行くことが出来なかった。苦々しくて重たい気持ちがより一層大きくなり、どうしても足を向けることが出来なかったのだ。

「はあ…」

なんて深くため息をついても俺の気持ちは一向に晴れてはくれなかったし、偶然路地裏で聞いてしまった言葉は脳裏にはびこり、確実に俺を苦しめ続けた。

俺は頭を抱え込んだ。だって、かつてなまえの兄貴を殺したやつが自分と同じ「海賊」をやっているのだ。そりゃあ、うんうん唸りたくもなるしうっかり泣きそうにもなる。…けど、よーく考えてみれば俺とその悪い海賊は生き方も志も明らかに違う。向かうところも護るものも全く、何もかも違う。だから、もしかしたら本当はそんなに気に病む必要は無いのかも、と思った時もあった。が、俺とそいつには同じ所もあるのだ。残念ながら根本的な部分が、一緒なのだ。そう分かった時、俺は自ら進んで海賊になったにも関わらず海賊になったことをちょっとだけ、本当にちょっとだけ後悔をした。

でも、なまえは俺が自分の兄貴を殺した悪いやつと同じ「海賊」をしているってことに対して何にも感じてないらしい。けど、あいつの過去を知ってしまったこっちは胸が張り裂けんばかりに痛んでいる。…なあ、何でお前、そんなに大事なことを俺に言ってくれなかったんだよ。どうして今まで隠し通していたんだよ。まあ…お前のことだから別に隠しているつもりは無かったのかもしれねえけど、けど…俺はもっと早くにお前の脆い弱さも知っておきたかった。



口には出来ないこと

110407