珍しい女がいた。 その女は志村(姉)と同じ店で働いているキャバ嬢で、客によく無理矢理ドンペリを頼ませて大金を手に入れる大変身勝手なやつだった。 変わった女がいた。 その女は他のキャバ嬢とは少し違い、俺がマヨ丼を食べてる所を見ても顔面蒼白にしてきゃあきゃあ騒ぎ立てながら逃げ出したりはしなかった。 ニヤッと笑う女がいた。 ぽつねんと二人きりになった店の一角で意を決し、「お前はこれを見てなんとも思わないのか。」と静かに問うと女は右側の口角だけを吊り上げ「例え、どんなにケッタイなものでもそれを死ぬほど好きになれるということはすごく素敵なことだと思いますぜ。」と言った。不覚にも嬉しく思ってしまった。 常識破りな女がいた。 その女はふいに猫のように軽い足取りで俺に近づいてきて、あろうことか「それ一口くださいな。」と言ってきた。思わず俺は驚いて目を見開いてしまったが自由奔放な女は俺の手からパシッと勝手に箸を奪い取り、パクッとマヨ丼を食した。 失礼極まりない女がいた。 その女は俺のマヨ丼を食べた瞬間、カッと目を見開き「おえっ、なにこれ!ゲロまずっ!!」と絶叫した。そしてその後床にダイブしゴロゴロとのたうちまわりだしたが、女は決して食べたマヨ丼を吐き出したりはしなかった。確かに口を動かし、その後ごくんと飲み込んでいた。 掴めない女がいた。 その女は一通りのたうちまわった後、またふらふらと俺に近づいてきてふいに「ねえ土方さーん、お口直しにドンペリでも頼みません?今なら限定サービスでそのドンペリにマヨネーズぶち込んであげますペリよ〜?」と言ってきた。ドンペリなんざ普段だったら、っつーか他の女だったら絶対に頼まねえけど、まあこいつの為ならたまには、ほんっとたまには無駄遣いしてもいいかな。と有り得ないことを考えてる自分に少々引いた。 よく分からない性格をしている、けど気に入った女がいた。 「じゃあ、ドンペリ一本寄越せ。」 「え〜?一本だけ〜?」 「…チッ、じゃあ…三本寄越せ。」 「あいよ〜」 「……」 「ん?」 「…てめえ、今日は何時に仕事終わるんだ?」 「2時ですぜ」 「そうか」 「うん」 「……。じ、じゃあ、これを全部飲み終わったら店の外で待っててやっから早めに仕事切り上げてこい。家まで送ってやるよ。」 「うそ、まじ?」 「大まじだ。」 「でへでへ、トシくん大好き」 「…へいへい」 「…っていうかさ、今気付いたんだけどあたしって意外と愛され姫なんだね!きゃ!」 「死ね。」 「またまた〜。ほんとに死んだらすっごく困るくせに。」 「……」 |