わたしとラビが奇跡的におんなじ高校に通えていたのはわたしたちの頭のレベルがおんなじだったから…とかではなく、単にラビがこの高校を推薦入試で入学し、わたしが一般試験を受けて入学したからである。そもそも推薦というものは、若干成績に余裕がある人じゃないともらえな代物だからラビは中々、というかかなーり頭が良い。それに引き換えわたしは、ヒーヒー言いながら本っ当にギリギリでこの高校に滑り込む位の実力しかもっていなかったから正直、頭の出来は壊滅的である。 だからきっと大学の入試では奇跡が連続して起こった高校入試のようにはいかないと思う。というか絶対にいかない。だって、実際にラビに直接志望校を聞いた時、やつは到底わたしが手の届くことのない大学名をサラッと言いやがったからだ。くそう。 「ねえ、この間の模試の結果どうだった?」 「ん?まあ…このまま維持できたらなんとかいけんじゃね?」 「ふーん?どれどれ…ってこれ、なんとかいけるってレベルじゃないよ!絶対余裕だよ!」 「えへ、案外俺ってすごいっしょ?」 「あー…わたしは今のままじゃやばいかなー、うう…」 「え、シカト?」 「ごめっ!なんか、無償にイラッときたからさっ!」 「えー、なまえちゃんたらひどいさー」 そう言いながらもラビは終始笑顔でこの状況を楽しんでるようにしか思えなかった。 「…なんでそんな笑顔なのよ。」 「ん?お前と話してるとなんか面白いからさー。」 「ハッ、どーだか。」 「ほ、ほんとうさ!でも、大学に行ったらかわいいかわいいなまえにもちょっかいだせなくなっちまうんだって思うと寂しいさー。」 この時、わたしが毎日想っていたことをラビがサラッと言ったからすごくびっくりした。ついでに、ラビが自分とおんなじことを思っていたことが分かり、なんか、もう堪らなくなった。今まで抑えてきたはずの自分の気持ちを抑え切れなくなってしまった。 「……」 「…ん、どうしたんさ?」 「…わたしも、」 「へ?」 「大学がラビと別々になっちゃうなんて寂しいよ。」 「……」 「大学に行ってもラビと一緒に今までみたいに馬鹿なことしたり思いっ切りはしゃぎたかったよ。」 「……」 「離れ離れなんて嫌だよ。ずっとずうっと、一緒にいたかったもん。」 言い終えてハッと気づいたわたしはラビの顔を見るとラビは珍しく困ったような表情を作り出していた。あ、やば。どうしよう。どうしよう。 「……」 「なーんて!うそだよーん!え?もしかしてびっくりし「ごめんな。」 「…え?」 「気づいてやれなくて、ごめんな。」 いつも人の気持ちばっか考えているラビは困ったように笑っていた。もう、なんだよ。ほんとなんなんだよ。なんでそんな優しくするんだよ。自分のこともちゃんと考えろよ。わたしに向かってそんなの自分勝手だって言ってよ。ほんとずるいよ。 「ううっ…」 「…なまえ?」 「っ…なん、でもっ…ない」 「あー…泣かない泣かない。」 「だ、だって、ラビが…」 「そうさねー俺が悪かったさねー。」 「…子供扱いしないで。」 「おーよちよち。」 「むかつく。」 「はいはい。」 「…でも、ごめん。」 「……」 「わたし、おこちゃまだからさいごまで自分の気持ちを抑えられなかったよ。いつもみたいにラビに迷惑かけちゃったよ。」 「……」 「本当ごめんね、我が儘で。」 「……」 「でも…、ちゃんと頑張ってね。」 だってわたしは前しか見てない、突っ走ってるあなたがそんなあなたがだいすきだから。 なんて恥ずかしいセリフをわたしは少し驚いているラビに向かって言うことができなかった。だってわたしはあなたの思う通りまだ、お子様だから。まだギリギリ、あなたとおんなじ高校生だから。 |