満月が浮かぶ夜には酒に限る。戦いの後には酒に限る。強くてうまい、酒に限る。

サファイア怪獣とまどろみ

「高杉すわあーん」

でへでへーと口元を緩くして笑うこいつは酒を少ししか飲んでないのにもうべろっべろだ。てめえ酒に弱いのか。なら、そもそもなぜ俺が酒を飲んでいるときに乱入してきた?

「うるせえくっつくなあっちいけ。」

「んも〜つれないですねえ」

そう言いながら酒瓶に手を伸ばすなまえは隙あらば俺に抱き着こうとする。まさか酒を飲むとこいつが抱き着き魔に変貌するとは思わなかったぜ。

「おいてめえ、とりあえずもう飲むんじゃねえ。」

「えーなんでですかあー?このお酒すごくおいしいじゃないですかあ。」

「てめえにこれ以上酔っ払われちゃあこっちも困るからな。」

「ふうん、じゃあやめますう。」

「そうしとけ。」

「そのかわりにいー…えいっ!」

あいつはガバッという音をたてながら背後から俺に抱き着いてきた。

「て、てめえ離れやがれ。」

「んふふー」

「んふふじゃねえ!」

「高杉さんの背中、ぽかぽかあったかいですねー」

「……」

「ずうっとくっついていたいなあ」

背中に響くなまえのふくふくした笑い声が不覚にも心地好く感じた。いつもならすぐにでもこいつを引っぺがすのに今日は妙に気分がいいから身体が柔く痺れたように動かない。ああ、この部屋にもし来島や万斎が来たら非常にめんどくさくてややこしいことになると頭では分かってるのに、俺はこのままでいたいと思ったもんだから不思議だ。



柔らかく溶けた心臓が麻痺

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言っとくがほんと今日だけだからな。

110708