純白のチャペルには永遠の愛と二人の眩しすぎる未来が小綺麗に詰まっている。十字架の後ろにあるステンドグラスはまるで二人を祝福するかのようにさんさんと輝いており、とても美しい。新郎である佗助はタキシードをしれっと着こなし、憎たらしいほど余裕そうな顔をして花嫁さんの隣にいる。うん、元カノであるわたしの目からも今日のあんたは十分かっこいいよ。それにすごくすごく、今までにないほど幸せそうにみえるよ。 「おめでとう」「お幸せに」 溢れんばかりの祝福の言葉が飛び交う中、結婚式は順調に進んでいき新郎新婦は来客たちと会釈を交わすようになっていた。 そんなことも気にせずにわたしはもくもくとドルチェを食べていると、いつの間にか佗助がスッと隣に来ていた。 「よう、なまえ。今日はわざわざ来てくれてありがとうな。」 「どういたしまして。…ってそんなことよりあんた…」 「あ?」 佗助の怪訝そうな声を聞いた後、わたしはワンテンポ置いて口を開いた。 「あの子のこと、末永く幸せにしなさいよ。」 わたしはくいっと首で上品に談笑している花嫁さんをさした。 「へいへい、てめえに言われなくても十分分かってますよ。…にしてもお前、そういうとこほんと変わってねえよな。」 佗助の呆れたような笑顔に、トキめくことを忘れていたはずのわたしの心が久々にきつく締め付けられた。望んでもいないのに佗助と一緒にいた、あの頃の思い出たちがしつこく蘇ってきた。あれ。もうきっぱり割り切ったはずなのにどうして、どうしてだろう。 どうしてこんなにも胸が苦しくて、今にも涙がこぼれ落ちそうになるんだろう。これじゃあまるで…ああ、ちくしょうちくしょうちくしょう。 「…っ、」 「…なまえ?」 「…え!な、なに?」 「お前、どっか具合でも悪いのか?大丈夫か?」 「別に大丈夫よ。それより佗助、」 「ん?」 「……」 「なんだよ」 「…今日は本当におめでとう。」 わたしは隠しきれない自分の恋心を永遠に抑えておくため、精一杯、口角をあげて人生最大の嘘をついた。 「ああ、ありがとう。」 お礼を言った佗助は今までに見たことのない位満ち足りた笑顔を見せてきた。 |