シュガーパウダーがまぶしてあるシフォンケーキを食べながら「わたしは別に二番目でもいいんだ。」と言うと、ともだちが呆れながら「あんたおかしいよ。」と言ってきた。

「なんで?」

「だって普通彼氏には一番に愛してほしいもんでしょ?」

「うーん…別にいいの。わたし二番目でも満足なの。」

「…浮気されていてもいいわけ?」

「うん。一緒にいれるだけで満足。」

そう言いながら最後の一切れを食べ切ると、ともだちは「あんたのその態度が彼氏を付け上がらせるんだね。」と言いデコピンをしてきた。

「いたっ」

「…まあ、とりあえず今日はそのエースさんが帰ってくるんでしょ?だったらちゃんと二人で話しなね。」

「はあい。」

わたしがへらっと笑いながら返事をすると、ともだちは「…ったく本当に分かってるんだか。」と呟きながらスッと伝票を持っていってしまった。

「えっ、この間も奢ってもらったのにわるいよ。」

「もう、別にいいから。とりあえずあんたは早くエースさんの所に行っちゃいな。」

「でも…」

「ほら行った行った。」

わたしはバシンと叩かれた背中をさすりながら「ありがとう」と言いエースの家に向かった。





この間もらった合鍵でドアを開けるとエースはまだ帰ってきていなかった。とりあえずわたしはエースに「着いたよー」とメールを送り、ぼふんとソファーに座った。

「……」

特にやることもなかったのでぽちっとテレビをつけて昼ドラに熱中しているとふいにガチャッという音がした。

「ただいまー。」

聞き慣れた声が家の中に響いたので、わたしは廊下まで出て行った。エースはわたしをみるなりニカッと笑って両手を広げてきたので素直に抱きしめられてみることにした。

「おかえり〜。」

「ふー疲れた。今回の仕事はほんっときつかったぜ。」

「あはは、おつかれ。」

なんて言いながら首筋に顔を埋めると知らない香水の匂いがした。驚いたわたしは慌てて顔を離すとそこにはなんとキスマークがついていた。…あ、はは。う、嘘。…え、えっと、とりあえずわたしちゃんと笑えてるかな。涙声になってないかな。大丈夫かな。

「……」

「ん、どうかしたか?」

「エース。」

「あ?」

「…わたしのこと好き?」

おずおずとそう尋ねるとエースはすぐに「おう、愛してるぜ。」と答えてくれた。だけどわたしの胸はその言葉を聞いてズキッと痛んでしまった。…ねえエース、なんでわたしはあなたの傍にいられるだけで満足なはずなのにこんなにも苦しいのかな。なんであなたの「愛してる」という言葉がこんなにも辛くて悲しいのかな。なんであなたの言葉がわたしの心まで届いてこないのかな。

「…っ」

「ん、どうかしたか?」

…ねえエース、もちろんわたしもあなたのことを愛してるよ、愛してるけど…すごく、すごく淋しいよ。



不満も不安も結局口に出来ないまま暗い深海へと沈んでいく

このままだと死んでしまうよ

110419