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栞さんへ捧げます。
独断で相澤先生シリーズで書かせて頂きました。
(もし要望が違ってたら申し訳ないです。)
服装は某美術館を巡るホラーゲームをリスペクトしてます。


 基本的に伴侶である消太さんとは勤務先は同じでも、家を出る時間は彼方の方が先だ。授業の準備やら朝の会議やら、担任を受け持つ先生はとても忙しいらしい。私はそんな彼を見送って、家事を済ませてから家を出る。そんな私がいつも通勤するのに使っているのは自家用車だ。今日もその予定で行くつもりだったのだが、朝になってエンジンの調子が悪くなってしまい仕方がなく電車で向かうことにした。学生時代振りの満員電車に少し気分が悪くなりつつ、揉みくちゃにされながらもなんとか目的の駅に辿り着く。ふうと一息吐いて足を進めようとした瞬間、後方から甲高い女性の叫び声が聞こえてきた。驚いて振り向くと女性の鞄をひったくりした男が私の方に目掛けて走ってきていた。女性の泥棒! と引き攣ったような声に咄嗟に私はひったくり犯の前に足を出した。漫画のように綺麗に転ける男と後ろから聞こえる駅員さんの声に私はなんとか胸を撫で下ろしていると、転んだ男が恨めしそうな声音で私に怒鳴り散らした。

「くそが!!」

 随分と稚拙な罵倒ではあったが、私は怯むより前に視界が一気に低くなっていくことに恐怖を抱いた。あれ? どういうことなんだ? 取り押さえられた男をいつもより数段低い目線で見ながら、私は大丈夫ですかと別の駅員さんに声を掛けられた。

「はい、だいじょうぶです……?」

 声がいつもより高い気がする。まるで子供の声のような。そこまで思考を巡らせて私は嫌な予感を覚えた。私の顔を見て駅員さんも何かを察したのだろうか、無言でガラスに指を指している。綺麗に磨かれたガラスを見るとそこには幼い頃の私がいたのであった。



「というわけで、今日はおしごとができそうにないです……」

 すみませんと力なく謝ると校長は愉快そうに笑いながら、気にすることないさと私にお茶を出してくれた。

「君が居なかった時もなんとか回せていたんだから今回も大丈夫さ」
「ランチラッシュさんに謝っておかなきゃ……」
「気にすることないさ。それよりいつ頃それは戻るんだい?」

 すずっとお茶を飲みながら校長はどこか楽しそうな様子でそう尋ねてきた。私は手の中のお茶を眺めながらわかりませんと小さく呟く。

「ふむ。仕事は大丈夫だけれど、そんな様子だと私生活に問題が起きそうだね」
「しごとも問題ですよ!」
「けど、個性はきちんと使えてるんだろう?」

 体の成長は五、六歳といった年齢にまで退化してしまったが、不思議なことに個性は変わりなく自分でコントロール出来ていた。一番にそれを確認したのだから間違いはない。私が頷くのを見ると、校長はまた何か考える様子で唸りながらポンとその可愛らしい手を叩くのであった。

「本当は何もしなくても構わないんだけど、君はそれだと納得しないだろう?」
「とうぜんです!」
「ならいつも通り生徒達に出す料理の食材に個性を使って、調理は……その身長だと逆に邪魔になるね」
「う……っ」

 痛いところを躊躇もなくピンポイントで射抜く校長を恨めしく睨んで見るも、楽しそうに怖くないと笑うのみだった。幼女が睨んでも怖いどころか可愛いだけだ。というのが校長の談であった。

「生徒達に見られると面倒だから、道中は相澤くんと一緒に行ってね」
「……それって生徒に見られたら逆に面倒じゃないんですか?」
「そこは相澤くんと君の演技力次第さ」

 小動物パワーを遺憾なく発揮した笑顔に絆されそうになったが、それは校長が面白がっているだけでは……? そしてなんの演技力なんです……? と言いかけた所で校長室の扉がノックされる。校長が返事をして入ってきたのは噂の相澤先生であった。

「お前それ……」
「……敵の個性でこうなっちゃいました」

 話は粗方聞いてはあった筈だが実際目にするとやはり衝撃は大きいらしい。自分で自分の姿を見て驚いたのだから、消太さんが幼児化している私を見て目を見開くのも仕方がない。血走った目を見つめていると、校長が先ほど私に言った言葉をそのまま彼に伝えていた。

「……休ませた方がいいのでは?」
「僕もそう言ってるんだけどね。まあ、食材に個性を使って貰うだけだからすぐに終わるさ」

 今日はそれをやったら帰っていいから、相澤くんも残業しないで今日は授業終わったら彼女を連れて帰るんだよ。校長は可愛らしくウインクをしながら私達に手を振った。私と消太さんはそれを苦笑いしつつ、食堂へと足を運ぶ。生徒が滅多に使わない通路を使いながら私は慣れない視界に四苦八苦していた。

「大丈夫か?」
「いつもと感覚がちがうので、歩きにくいですけどへいきですよ!」
「……今度から通勤の時間合わせるか」
「ふふ。それもいいかも知れないですね」

 低い目線で見る消太さんはなんだか不思議な感じでとてもくすぐったい。消太さんは訝しげな表情をしながら、いつ治るのかと尋ねたが私は曖昧に笑うことしか出来なかった。とてとてと客観的に見たら可愛らしい音が付きそうな歩き方たが、身長の差故に仕方がない。たたでさえ身長が高い消太さんと幼児化した私は歩幅が違うのだから、例え彼がゆっくりと歩いてくれたとしても私にしてみたら、それさえ必死にならないとすぐに置いていかれてしまう距離だ。そんな私の様子に消太さんが見兼ねたように言う。

「抱っこしてやろうか」
「おねがいします」

 即答であった。彼の腕の中の心地良さは身に染みていたが、小さい体だとまたフィット感が違う。これは中々どうして。少しだけこの個性に感謝をしながら、漸く目線が近くなった消太さんを見て私はまた笑うのだ。

「というか、消太さんが抱っこって……かわいい」
「抱っこは抱っこだろうが。なまえ、その服どうしたんだ?」
「ミッドナイトさんがくれました」

 幼児化した体にぴったりな洋服は、たまたま朝に出会った彼女が何処からか持ってきたもので、テンション高めに可愛いと叫びながら着せ替え人形された時の物だ。白いフリルの付いたブラウスに赤いスカーフ、赤いプリーツスカートに紺のハイソックス。靴も赤で纏められていて、小さくリボンが装飾されている。どこかのご令嬢のような格好で自分でいうのもあれだがよく似合っていた。幼いとなんでも五割増しで見えるよね。

「これを生徒に見られたらあれですね、相澤先生隠し子発覚!? みたいな」
「大問題だな。というか、それで困るのはお前も一緒だと思うんだが」
「1Aのみんなに詰め寄られそうだなぁ……」

 誰の子ですか、最低です! そんな言葉が聞こえて来そうで、消太さんの顔を見るとついつい笑いが込み上げてくる。

「隠し子じゃなくて本当に作るか」
「はい?」
「こども」

 三秒間を置いて言葉の意味が理解出来ると一瞬のうちに顔が火を噴くのがわかった。背筋からよくわからない汗と、恥ずかしさで頬を熱くさせていると、消太さんは意地の悪い笑みを浮かべていた。

「……が、学校ではなくお家で話しましょう! そ、そういうことは!」
「ほう。議論の余地があるということで」
「あ、う……! と、とにかく! 今日もおしごとがんばりましょうね!」

 話題を逸らすのに必死になって頭を振っていると、髪が乱れるといって頭を撫でられた。服同様、ミッドナイトさんにセットされた髪は少し乱れてしまったみたいだ。こういうところが、格好良くて腹立たしいな。私が頬を膨らませていると、頬を指で触られた。

「その姿でそんな顔してると本当に子供みたいだな」
「だってこどもですから」
「なんだそれ」
「……がんばって抱っこしてね。おとうさん!」

 揶揄いがてらそう言うと消太さんは嘆息を漏らす。その呆れた表情も格好いいのだから本当に腹立たしくて仕方がない。そんな彼をどきっとさせられたのなら嬉しいものだが、道程は遠そうだ。さてどうやって彼に驚きを齎そうかと思案していると、廊下の曲がり角でとある人物に出会った。金髪の痩せ細ったその人は、かのナンバーワンヒーロー、オールマイトであった。

「あ、オールマイトさんおは「見てない!」」
『はい?』
「わ、私は何も見てないし聞いてないぞ! 相澤くんに隠し子がいたなんて、そんなこと絶対に誰にも言わないからね!」

 早口でそう捲し立てると、マッスルフォームに変身してどこかへと足早に言ってしまった。

「え、今のって絶対に勘違いされた……?」
「……はあ。面倒だ。なまえとりあえずオールマイトさんに話に行くぞ」
「オールマイトさんわかりやすいから、すぐに隠し子騒動広まっちゃいそうですもんね」
「元はと言えばお前のその発言のせいなんだから、反省しなさい」
「……はぁい」

 消太さんに抱かれながら、逃げ去ったオールマイトさんになんとか事情を説明したがその場面を目撃した生徒のせいで、結局相澤先生隠し子騒動が起こるのであった。

幼女はしたたかであれ

おまけ

「朝起きたら消太さんが高校生になってた凄い」
「誰に向けて言ってるんだなまえ」
「わ、凄い! 消太さんお髭ない! 若い!」
「興奮してるとこ悪いんだが、そろそろ上からどいてくれ」
「もう少しだけ! 日曜日のお休みにこんなミラクルが起こるなんて! あー、高校生の消太さんも格好いい……」

 件の幼児化騒動はその日のうちになまえが元に戻ったことでなんとか収束した。好奇の目で見られたが、消太は気にするでもなくいつも通りの日常を送っていたのだが、何故か今度は消太が高校生にまで若返るという、なまえ曰くミラクルが起きていた。消太の上に馬乗りになったなまえは興奮気味に頬をぺたぺたと触れながら、楽しそうに笑っている。摩訶不思議体験をしている消太はその行動を呆れた眼差しで見ながら、掌をグーパーと繰り返す。力の加減を調べているのだろうか、消太は問題ないと把握したのか少し起こしていた体をまたベッドへと戻した。ふかふかの枕に沈む体は確かにいつものそれより若々しい気がする。肌の潤いやら、欲に忠実な活力やら。目の前で頬を染めてだらしのない顔をしているなまえはそれに気付くことなく、うわ言のように格好いいを繰り返していた。

「この姿って何歳くらいかな? 17、18?」
「多分そんくらい」
「あ〜、若い! なのに凄く格好いい! 消太さんちゅーしてもいいですか!」

 何が彼女のスイッチに触れたのか、興奮気味にそう言って返事を聞く前に可愛らしいリップ音を立てて、消太の唇に触れる。いつもより柔らかな感触と、髭のちくちくする感じがないため少しの違和感を覚えたが、これはこれでよいものだった。触れるだけの唇に消太はムズムズとしたものを覚える。若い体はそれだけで簡単に火がついてしまいそうだ。

「ねぇ、消太さん。私のことせんぱいって呼んでもいいんですよ」

 なんちゃって。とくすくす笑いながら言ったなまえだが、くるりと体が反転すると情けない声を出した。状況が理解出来る時間を与えるほど優しくはないようだ。消太は先ほどなまえにされたように、彼女の上に乗ってその耳元に唇を近付けた。

「せんぱい?」
「ひぁ!」
「そっちが煽ったんだから責任とりましょうね?」

 ねぇ、せんぱい。わざとらしく艶を含んだ声に耳がぞわぞわとして、体が震える。瞳が笑っていない。無造作にはだけたシャツから見える素肌は、色気の暴力ともいえるほど色香を纏わせている。

「し、消太さん? 冗談ですよ……?」
「悪いな。ガキの悪戯だと思って観念しとけ」

男子高校生の若さを身を以て体験するなまえであった。

このあと滅茶苦茶××した。

幼女はしたたかであれ

20170120 title プラム
20170216修正

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