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君は可愛いおんなのこ


白雪姫と呼ばれた理由。

 雄英高校ヒーロー科のみょうじなまえは影で白雪姫と呼ばれているらしい。艶のある黒い髪と雪のような白い肌。そしてたまに見せる照れた頬が林檎のように赤くなって可愛いからなんだとか。そして、何故かいい匂いがすると男子の中では専らの噂だった。女子なんだからシャンプーやら香水やらでいい匂いがするのは当たり前じゃないのか、と一蹴していた相澤だったがクラスメイトの山田ことマイクは違うんだよなあと相澤の肩を叩いていた。寡黙な相澤とお調子者のマイクの二人は何故か仲が良かった。正反対の性格だからこそ馬が合うのだろうか。

「消太、みょうじの隣の席だろ〜? なんかねぇのかよ〜」
「なんもねぇよ」

 マイクは大袈裟に溜息を吐くと椅子の背もたれに肘をつきツマラナイと携帯をいじり出した。参考書を読んでいた相澤は気にするでもなく、問題を解き続けていた。朝一番に学校に行こうぜ! という突拍子のない発言に付き合わされ、まだ人通りの少ない早朝に学校に来ていた。欠伸を噛み殺して眠気覚ましのコーヒーを飲みながら、参考書を解く相澤にマイクはなあなあと言葉を掛ける。なんだかんだ言って無視をしない相澤は根は凄く優しいのだ。

「あれってみょうじじゃね?」
「……あいつこんな時間に来てるのか」

 窓から身を乗り出してマイクはおーいと声を掛けた。きょろきょろと周りを見る#name2#にマイクがこっちだと叫ぶと彼女は頭上を見て、そして不思議そうに笑った。相澤は彼女の作ったようなあの表情があまり好きではなかった。

「みょうじって可愛いよな〜、隙がねぇけど」
「……」
「なんかコメントないのかよッ!」
「……別に。ただのクラスメイトだろ」

 お前ってほんとに朴念仁。男か? ついてる? と意味の分からないことを言うマイクをスルーしながら相澤は隣の彼女の席を見た。一般的には可愛い部類だと思うが、ただそれだけだ。強いて言うならば。

「髪は綺麗だと思う」
「へ?」

 一言相澤はそう告げるとまた参考書を解き出した。なあなあ、それってどういう意味だよとニヤニヤするマイクを煩いと一括するが彼は変わらず締まりのない顔をしていた。

「おはよう。二人とも早いんだね」
「おっはよぉ〜! いやー朝一番に学校に来て見たくってさァ〜」
「……おはよう」

 朝からテンションの高いマイクと通常運転の相澤にみょうじはくすくすと笑いながら、鞄から教材を取り出して机に入れていた。ふと視線に入ったのはキラキラとしたピンク色が目立つやたらとポップな表紙の本だった。こんな教科書あっただろうか。相澤の視線に気が付いたのか、みょうじは隠すようにして本を手で覆い頬を赤く染めた。

「み、見た?」
「見た」
「〜!! ……引かない?」
「別に。というか、引くようなもの学校に持ってくるなよ」
「なになに、何の話してんの〜?」

 みょうじは赤くなった頬のままおずおずと鞄から一冊の本を取り出した。小さい女の子が好きそうな可愛らしいアニメーションの本、女児向けアニメの雑誌がそこにはあった。

「こういうの好きなの? みょうじ」

 これ日曜の朝にやってるヤツだよな〜とマイクは面白そうに中を見ていた。マイクの言葉に興奮気味に#name2#はそうなの! 凄く面白いよ! と見たことのない表情で応えていた。本当に心の底から楽しそうに笑う彼女の笑みに心が鷲掴みにされたような感覚を相澤を襲った。

「そういえば、みょうじの個性ってまほーしょうじょ、だっけ?」
「うん。変身すると通常の3倍の力を発揮出来るよ。本気出せばもっといけるかな?」

 だからその勉強っていうか、恥ずかしいけどこの歳になってこういうのがまだ好きなんだよね。と、みょうじは頬を染めながら笑った。恥ずかしいから皆には内緒にしてとお願いする彼女の表情はいつもより幼く見えて、子供が悪戯を隠す時のようだった。

「……好きなんだな。それ」

 今まで黙っていた相澤が口を開くとみょうじは照れ臭そうに「昔からの憧れなんだ」とはにかんだ。その表情がいつもの貼り付けたような表情よりずっと生き生きとしていて、相澤は好きだと漠然的に思った。

「みょうじ、お前そうやって笑ってた方がいいよ」

 そっちの方が可愛い。と相澤は言うとみょうじは、一気に顔を赤くして狼狽えたように声を吃らせた。マイクは口笛を吹いて茶化すように相澤を肘で突いたが、彼はまたなんでもない表情で参考書を読み進めていた。

「あ、ありがとう……?」

 みょうじは赤くした頬を誤魔化すように俯き、二人に聞こえるように日直の日誌貰ってくるとその場から走り出した。足早に駆けていく後ろ姿を見て、白雪姫というあだ名の意味がわかった気がした。

君は可愛いおんなのこ すいせい