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しあわせのおとなりはしあわせ

 ママに呼ばれていつも通りのお茶会を楽しんでいるナマエは目の前に並べられているお菓子の数々に目移りをしていた。最初の頃は緊張しっぱなしであったがクラッカーと結婚して十年以上も経つとそれなりに慣れというものが出てくるものだ。こうやってお菓子の数々に目移りするほどには余裕も出ているし、卒なくママや他の兄妹達とも会話をすることも出来る。それでもママに失礼な態度をとれば例え息子の嫁だとはいえ、即死んでしまうのは変わりないのだけれど。と、生クリームをたっぷりと乗せたシフォンケーキに舌鼓を打っていた。人間環境にさえ慣れてしまえばどこまでも図太くなれるものだ。夫婦で出席を、と求められたお茶会にはいつも忙しくしているクラッカーの兄妹達も揃っていていつにも増して楽しい雰囲気だ。ママも色鮮やかなスイーツの数々とお客人から渡された宝箱で上機嫌になっている。シフォンケーキを食べ終え次は何にしようかしら、と悩んでいれば隣に座っているクラッカーが彼女を呼んだ。

「ナマエ」
「どうかしましたか?」
「お前も食べてみるといい。中々に美味いぞ」

 差し出されたのはジャムが練り込まれたビスケットだった。ビスケット大臣である彼が言うのだからさぞ美味しいに違いないとそのまま差し出されたビスケットを食べた。口に入れた瞬間にさくっとほどける食感とジャムの甘酸っぱさが広がって素敵なハーモニーを奏でている。美味しさに感動するのと同時にはしたなかったかしら、とナマエはクラッカーを伺うが彼は嬉しそうに微笑むだけであった。ナマエはそのことに安堵しながらビスケットの美味しさを噛み締める。

「美味しい。どこの店でしょうか」
「気に入ったか。なら帰りにいくらか包んでもらうといい」

 ナマエの評価が自分と同じなことに喜んでいるのか、美味しいと笑うナマエに喜んでいるのかクラッカーは機嫌はとても良さそうであった。ナマエも嬉しそうに笑う彼を見るのが大好きなので自然と釣られて頬が緩む。

「ふふ。嬉しい。でも一番好きなのはクラッカー様のビスケットですからね」
「そんなことは知っている」

 二人が甘ったるい雰囲気を存分に醸し出しているのを気付かないのは当人だけだ。何せこれが二人の当たり前の日常の一幕でしかないからだ。自然と近くなる距離感に常連であるお客人方はあらあらと仲睦まじい二人を微笑ましく眺め、兄妹達は慣れたものでまたやってるなと呆れた視線を送るだけだ。シャーロット家で一番の仲良し夫婦だなんて国民からも噂されていることを知らないのは当人達だけであった。

title alkalism
20231018

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