Mole's Lullaby
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この「鬼物語」シリーズには猟奇的な表現、グロテスクな表現が含まれています。
また、カニバリズム要素も含まれております。

そういった表現が苦手、又は嫌悪を抱く方はどうぞお戻りください。

















青い肌に紅き花びらの如く散る人の血。ぞっとする色彩の彼らを見たのを最後に、1つの命が絶たれる。

落とされた首を粗雑に掴み、青白い肌に真っ赤な紅をつけた彼女は口の端をあげた。

桜色の髪が生温い風に吹かれ、月光に透ける。

「お前は、私達となんら変わりはしない。

どんな理由があったにせよ、罪は罪だ」

彼女が掲げると、流れる血液が鼻に、頬にビチャビチャと掛かり彼女を汚す。

しかし彼女はそれをまるで渇望して止まなかったと言わんばかりに、舌を出してその血を受ける。

ごくり、と喉がなってから少しの時が流れてから一言、ポツリと呟いた。



「私達もお前達も、同じ大罪人だ」















ーー彼らがその村に現れてから、まだあまり日が経っていない。

桜色の髪に白い化粧、真っ赤な紅を塗った彼女は、異色ながらもその堂々とした振る舞いと美貌から邪魔者扱いを受ける事はなかった。

寧ろ、精霊の類ではないかと噂をされていた。

桜色の髪から、桜の精だと呼ばれた彼女は満更でもないようで、艶やかな笑みを浮かべた。

彼女の側には常に2人居た。

1人は傘子を深く被り決して取らない、褐色の肌の大男。寡黙で言葉をあまり発しなかった。一度、子供がその下を覗いたところ、鋭い瞳で睨まれ泣いたという事がある。

もう1人は、口元を布で覆った黒髪の美しい幼子だ。こちらは言葉は言えずとも喃語の類を常に発していた。そして、かなりの大食らいのようで、あんみつを8杯食べていたという噂がある。


「ってな!もう村中その話題で持ちきりだよ!!」

興奮気味に話す男ーー太吉と、それを呆れて半目で眺める女ーー雪の兄妹の姿がある。

「なぁ、見て見てぇだろお雪!そんな面白そうな人たちにあってみてぇだろ!」

「兄さん、この間からその話しかしてないじゃないか」

「だってよぅ!桜の髪なんて聞いた事ねぇだろ!で、その一緒にいる男と女の子もなんか面白そうじゃねぇか!」

「面白そう面白そうって、ホント野次馬根性だけはスゴイわよね兄さん。ホラ、いいからちゃんと店番してよ」

お雪に急かされ、渋々と背を向けた彼だったが、暖簾の前まで行ったところで振り返る。

「なぁ、お雪ーー」

「店は休まないからね。ご飯の米を芋にしても良いなら良いけど」

「行ってきます」

今度は大人しく店に戻った。
雪と太吉は同時にため息をつく。お雪は、全く世話が焼けると呆れ、太吉は口うるさい妹で不幸だと嘆く。

しかし、太吉はしっかり者の妹が居たからこそ、今までやってこれたのを知っている。

裁縫も炊事も掃除も、金の管理も自分だけだとてんでダメで、そういうところを支えてくれるのが妹のお雪だ。

一方のお雪も、好い加減ではあるものの、辛い時に支えてくれ、不安を取り除いてくれたのが兄である事を分かっている。

2人は互いになんやかんや文句良いながらも仲の良い普通の兄妹だった。

しかし、好奇心が人一倍多い太吉は、その桜の精の存在が気になって仕方なかった。

平和な街に来たその三人が、自分の退屈な時間を変えてくれるのではないかと、少しばかり期待した。

そしてその通りに全く思い描いていた未来が変えられる事になるのは、僅か数日後の事である。



2012.5.24


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