Mole's Lullaby
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八つ裂き家の話



八津崎という名はそのまま八つ裂きから来ている。
八津崎家の男子は代々刀職人として育てられる。刀としては一級品もので、それぞれの刀には鬼の魂が宿ると言われている。
血を浴びる程にその力は増すというーー殺しの為の刀。


八津崎家長男蒼魄と、次男が黄魂、その二人の父親がいた。

二人の母親が亡くなってから、父親は殺しの刀を作るのをきっぱりと辞めた。
それは代々継いで来た歴史を断つという事だ。

婿養子であった彼は、その仕事を二人に背負わせたくなかった。自分の嫁が死んでから、死というものが怖くなった。自分の刀に、どれほど の命が染みつくのか。

既に刀作りの基本は知っていた二人だったが、八津崎家の血が薄くなったせいもあるのか、蒼魄は才能はあれど熱意はさっぱりなく、黄魂はやる気はあっても才能が全くなかった。

その為、どちらにしても此処までだという事もあり、刀鍛冶はそこで終わる事に決められた。

だが、贔屓にしていた裏の人間は大反対した。八津崎家の刀は、裏の人間の間には有名だった。その為、話を聞き入れなかった八津崎家は彼らの標的となりーー、家を文字通り潰された。

父親は二人を逃がす為に態と残り、兄弟は共に逃亡する。



二人の才能の差は組にも伝わっている。蒼魄は真っ先に狙われるのは自分であろう事を自覚していた。

だから、自分を頼り共に居て頼ってくる弟と離れたかった。母親のように弟の為に家事をするのもうんざりだった。もし自分を連れ去る時に黄魂が側に居たら、厄介だった。


黄魂は職人としての才能は全くない。

だが、刀の使い方に関しては、一流だった。


蒼魄だけはその事に気がついていた。黄魂には、八津崎家の作った刀の力を最大限に引き出す能力がある事を。

だから、彼は仮の家を出るとき、自らが作った刀、 "黒雨"を置いて行った。

もしも黄魂が命に関わるような事があれば自分で守れるように。

あわよくば、そうして自分のところに来なくなれば良いと、思った。

こうして、蒼魄は行方を眩ませ、残された黄魂は組の人々に追いかけられるハメになるのである。


黄魂「蒼兄どこ行ったんだよおおお卑怯者おおおおお!」


しかし行方を眩ませた蒼魄は蒼魄で大変だったり。

「なんで俺があんな面倒な世話役なんかやらなきゃならないんだ……」



2012.5.23


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