松岡江
先輩を連れ出したいの
無重力
受話器越しに最後に言った夏芽先輩の声が忘れられない
先輩はお兄ちゃんに恋している
そんな先輩とは裏腹に私は先輩に恋をしている
お兄ちゃんが羨ましいとさえ思った
先輩の悩んで辛そうな声
押しつぶされそうな、そんな声
電話を切って数秒、いてもたってもいられなかった
先輩はきっとあそこにいる
―『じゃあ、おやすみ江ちゃん』
― バイバイ、、、
先輩はまたねって行ってくれなかった
そうしてさっきまでのやりとりを思い出しながらついた高台
先輩は、、、泣いてた
「はぁはぁっ、、夏芽先輩っ!!」
『、、、江ちゃん!どうしてこんな所にいるの?!』
「先輩の事が心配だから!さっき先輩がまたねって言ってくれなかったから!」
先輩がいなくなっちゃうって思ったから
『、、、江ちゃんは心配性だなぁ』
誤魔化さないでよ
「誤魔化さないでよ!」
『江ちゃん、、』
「先輩が辛いなら私に相談してよ!先輩の事、、もっと私に話して下さい!」
先輩の事もっと教えてよ
『ねぇ江ちゃん、、私は、松岡が好き』
「、、知ってます」
『そっか、、』
「ねぇ先輩、もっと星が見えるところに行きましょう」
『今日は星が綺麗だもんね、月も』
先輩が好きな気持ちは変えられない
もし先輩が、心が、カラダが苦しいなら、
宇宙に行くのは無理だけど、高いところに連れていくよ
「宇宙に行けば、何もかも、6分の1になれるのかな」
『え?』
「ううん、なんでもない」
『、、先輩、今日は私の家に泊まりにきてください、お母さんは友達と旅行に行っちゃったんですけど、お兄ちゃんは帰ってきてるんです』
「賑やかで楽しそう、お邪魔させてもらいます」
『じゃあ先輩、帰りましょう?』
「そうだね」
私の見え隠れしてる気持ちは多分バレてるんだろうけど
先輩は私の左手を掴んでくれるかな
「江ちゃん」
「月が綺麗ですね」
『え?』
「さっ行こう!」
そう言って掴まれた左手
家に帰りたくないな、なんて
先輩、私がその言葉の意味、知らないとでも思ってたんですか?
重力のない彼方へ
お前ら仲いいな
「「いいでしょー」」
次は私が先輩に言う番
Thank you for 1/6
ぼーかりおどP
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