「銀ちゃんどうして鳥は飛ぶアルか」
 がじがじ酢昆布を忙しくかじりながらぼんやり空を見上げて率直な疑問を投げかける。その神楽の疑問を鳥だからだと適当にばっさり切り捨てる銀時は手に持った写真の猫を忙しく探して回っていた。時刻は午後一時、朝っぱらから飼い猫の捜索を依頼されて既に五時間が経過している。飼い猫が二日いなくなったくらいでびーびー言いやがってコノヤローとかぶちぶち文句を垂れつつ報酬は結構なものだったので引き受けてしまった。そもそも猫を探すって無謀じゃないかと今更気付いてなんだか泣きたくなってくる。
「じゃあどうして船は飛ぶアルか」
「天人が造ったからだ」
 ふうん。特に興味もなさそうに言う神楽に苛っとしつつお前も猫探せよなと突っ込んだ。二人のいる場所から随分離れた位置では新八が一人でせっせと猫を探している。いいぞ新八そのまま猫を見付けてしまえ。
「あああいねえええ!!ちょ、神楽。自販機行ってきて」
「なんでネ。自分で行けヨ」
「もう銀さんくたくたなの!!足腰が悲鳴をあげてるの!!」
 そう言って財布を渡すと一応は受け取ったものの結局渋る神楽にじゃあ好きなのふたつ買っていいからと付け足すとダッシュで走って行った。はあ、と銀時の疲れたため息が響く。よろよろと近くのベンチまで歩いてどっしりと腰を下ろした。今時の飼い主は猫に10万円も出すらしい。
「銀ちゃん買ってきたアル」
 ぽてぽてと相変わらず酢昆布をかじりながら自販機から帰還した神楽は銀時の好み通りに買った冷たいイチゴ牛乳をぽいっと雑に放る。ぐったりとベンチに座り込んでいたために些か反応は遅れたが、なんとかイチゴ牛乳の缶を受け取ってさんきゅと怠そうに神楽を労った。続けて飛んできた財布を片手でキャッチ。それを懐へ突っ込むのと神楽が再び空を見上げるのはほぼ同時で。暇かこいつとか思いながら銀時はプルタブへ指を引っ掛けた。
「銀ちゃん、人間は飛ぶアルか」
「はあ?何言っちゃってんの神楽ちゃん。人間は飛びません」
 がじがじ。酢昆布をかじりながら不思議そうに小首を傾げる神楽を不審に思いながらもぐびりとイチゴ牛乳を一口。んま。やっぱりイチゴ牛乳だわ、うん。とか一人で納得していると神楽の白い指がでも、と空を指差した。
「人が飛んでるネ」
「…は?」



空から人が降ってきました。




「ちげぇよあれ落ちてんだよ!ななななんとかしろ神楽ァアア!!」
「まかせるヨロシ!キャッチしてやるネ!」
「とりあえず手に持ってるもの置きなさい!!危ないでしょ――」
「銀ちゃん危ないヨ!どいてヨ!」
「うおアアア!!!!」


← →





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -