ざっきんざっきん、と俺を低俗な細菌類のように呼ぶ彼女は世界で言うところのツンデレ娘である。俺のことが好きだというのに特別気を引くでもなくざっきんざっきん、とあくまで仲のいいクラスメートとして接してくる可愛い可愛い小動物。だから俺もそんな彼女にはあくまで仲のいいクラスメートとして人のいいざっきんとして接してあげている。あと何回甘い顔をしてやれば彼女は告白に踏み切るのだろうなんてそう遠くない未来を想像しながら、目の前でせっせと俺のノートを写している彼女をにっこりと見詰めた。
「んんん、ありがと」
 嫌に色っぽい声音で言いながら彼女が反るように伸びをする。ちらりとセーラー服の隙間からお披露目された白い脇腹をそれとなく視界に納めつついいよ、とありきたりな台詞を吐いてノートを片付けた。授業もそれくらい集中すればいいのに。と思わず口走ると思い切り顔面に筆箱がクリティカルヒットしたので二度と言わない。ぶふあ!と盛大に吹き出して楽しそうにけらけら笑う彼女はまあ可愛い、ので、許してあげよう。何故かちくちくと後頭部に突き刺さる誰かの視線を感じながら、俺の顔面に投げ付けたせいで辺りに飛び散った筆箱の中身を丁寧に片付けてあげた。はいどうぞ、とにこりとしてやれば彼女は白い頬をほんの少し赤らめながらありがとうと言ってぎこちなく笑う。…なんて言うか、女の子って簡単だなあ。
「あ、そうだ」
 これ貰ったんだけど、と鞄から引っ張り出したそれを彼女のもとへすいっと差し出す。彼女が俺に告白してくるまでの日数を大幅に減らすためにと考えた結果の産物であるそれは大江戸ランド、と目に痛い配色で印刷されたチケットだ。待つのは得意だけど苦手なんだよね。彼女のきらきらとした大きな瞳を見ているとやっぱり女の子という存在が簡単に思えて仕方がなかった。ちなみにチケットは自腹なわけだがこういうことに関しては出し惜しみしてはいけないというのが俺の持論。
「くれるのっ?」
「うーん、そんな感じかな」
「ほんとっ?」
 彼女が身を乗り出したことで柔らかそうな髪がふわりと揺れる。その拍子にシャンプーの香りが鼻をくすぐって思わずくらっとしてしまった。いやいや。本末転倒だろ。
「来週末って暇?」
 気を取り直して彼女の好きなとびきりの笑顔でそう言ってやる。きっと彼女はまた先ほどのように白い頬をほんの少し赤らめながらうん、なんて言うんだろう。


 




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