最近よく、夢を見る。いつもきらきらしていてまぶしいあの子をむちゃくちゃにする夢。シチュエーションは違う。例えばあの子の部屋、例えば風呂、例えばホテル、例えば、夜道。夜這いをする日もあれば待ち伏せをする日もあった。嫌がるあの子を力ずくで連れ込んだこともあった。押さえ付けて、無理強いをして、泣き叫ぶあの子にムラムラと熱く胸が揺らいで仕方がなかった。そうして今日もその夢を見るのだ。
「――っ」
 ぶちぶちと左右へ乱暴に引っ張り回したワイシャツのボタンが四方へ弾け飛ぶ。背中の痛みに呻いていたいろちゃんが驚いたように俺を見上げ、やめてくれと言わんばかりに小さな手が俺の腕を掴んだ。大きな瞳が切なげに歪む。この顔も、もう見慣れた。泣きそうなそれも、涙で濡れたそれも、もう見慣れた。幾度となく、見た。同じ夢の中で、何度も犯した。胸が熱い。彼女をむちゃくちゃにする期待に、焼かれている。
「や、やま、」
「なあに?」
 いろちゃんの腕を押さえつける。圧倒的な力の差を見せ付ける。男と女を、自覚させる。細い手首がきしりと音をたてたような気がした。毎日鉄の塊を振り回しているとは到底思えない華奢で白い腕は女の子らしくがたがたと震えているようだった。
 いろちゃんは強い。よく磨かれた腕は平隊士程度なら簡単に捩じ伏せてしまう。現に俺も何度か吹っ飛んでいる。殴られて。そんな男勝りな彼女が圧倒的劣勢に陥った今現在のこの状況が酷く胸を焦がしてなんとも言い難い。ぼそぼそと燻っていた支配欲だとか征服欲だとか、恐らくそんなようなものが充たされる感覚に似ている。罪悪感、というのか、そういうまどろっこしいものはとうに消えた。若しくは端から無かった。まあそんなことはどうでもいい。
「はは、下着派手じゃない?」
「そ、そんなの、関係ない、じゃないです、か」
「関係ない?こんな男所帯でこんなに派手な下着じゃ、セックスアピールにしか見えないんだけど?」
「せっ…!?」
 かっといろちゃんの白い頬が薄暗い部屋でもよく解るほど激しく赤みを帯びる。隙をついていつでも逃げられるようにと震えながらも力んでいた細腕が一瞬強ばった。俺が腕を掴んでいることから意識が逸れたのを感じて床にくったりと萎れこんでいたスカーフを引き寄せて彼女の手首を重ね、ひとつに束ねる。ぎゅっと頭上で縛り上げるとはっとしたようにいろちゃんの瞳が揺れた。


 




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