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「…うーん、来週かあ」 とか、俺はすっかり思っていたわけなのだが。 「ん…?」 彼女は白い頬をほんの少し赤らめるどころかどこか困ったように形のいい眉をくっと中心に寄せて思案顔をして見せた。その姿から俺の期待していた二つ返事が彼女の口から発せられる様子は無いに等しいことは簡単に予想できてしまう、わけで、あれ、おかしいな、なんで? 「い、一緒に行かない?」 僅かにひきつった口元を気遣いなからあくまで平静を装って解りやすく誘い直す。大切なことを忘れていた。そういえば彼女はツンデレ娘だったのだ。ここで引き下がっては距離が開く一方になってしまう。女の子ってやつは簡単なんだからもう一押しくらいすれば 「うーんごめん」 落ちる 「無理かなあ」 「え!」 はず。 ぐるぐるとシナリオと違うこの状況が頭の中を駆け巡る。おかしい、おかしいな。疑問符だけが脳細胞から独立したように飛び回った。なんで、なんで?俺のこと好きなんでしょ?どこに断る理由があるわけ? 「悪ィな」 頭上から降ってくる声にぴりっとこめかみが痙攣する。気にしないように努めていた俺の後頭部を突き刺している視線も、ここまでくれば誰だか解ってしまって気付いていないふりも無意味になってしまった。ぽんぽん、と叩かれた肩は見かけに反して力が籠っているような気がしないでもない。 「土曜は俺と映画。日曜はチャイナたちとデートだそうだ」 「…そっか、残念だなあ」 ごめんねざっきん、とにこやかな笑顔で告げる彼女に悪意は感じられない。それでも動揺してぐらぐらと揺れ動く気持ちが落ち着くことはなかった。俺の肩をぽん、ともう一度だけ軽く叩いた土方さんが余裕の笑みを浮かべながら隣を通り過ぎて行く。 はっきり言って最悪だ。かっこ悪いことこの上ない。でも横取りだなんて非人道的行為はさすがに俺にも我慢できないわけで、兎に角見事に焚き付けられてしまったのだ。それが不可抗力であれなんであれ。
見せろ男気!
とりあえず俺だって本気くらい出せるってところを見せてあげるよ。
‐‐‐‐‐ 企画「誰も寝てはならぬ」さまに提出 遅れてすみませんでしたorz そしてどうやらスランプなようですorz
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