バトルフロンティアの中でも一際立派なバトルタワー。
そんなフロンティアを一望出来る最上階の私の部屋。今日もチャレンジャーで賑わっている。
「…はぁ。」
その様子を見て、私は溜め息をついた。
ここ最近、連戦続きでまともに休んでいない気がする。
それどころか家にも中々帰れない日が続いていた。
「…ジュンに会いたいなあ。」
脳裏にふと、愛しい息子の姿がよぎる。
甘えん坊で、誰に似たのかちょっぴりせっかちだけどとても可愛い私の息子。
しばらく会ってないせいか、無性にジュンに会いたかった。
その瞬間、コンコンとドアがノックされた。
「はーい、開いてるぞー。」
「失礼します。」
「何だネジキか…。何の用だ?」
てっきりダリアとかカトレアかと思ったのに。いや私はそんな変な感情はないが、やっぱり部屋に来られるならさ、男よりも可愛いお嬢さんたちの方がいいじゃないか。
「ボクですいませんね。…貴方にお客様です。」
「お客様?」
誰だろ。チャレンジャーならわざわざこっちに来ることないだろうし。
ケイト辺りが何か用でもあって来たのか。そんなことを考えていると、現れたのは意外な人物だった。
「ダディ!」
ふわふわのはねた金髪。キラキラと輝く金色の瞳。そして、私を呼ぶその声。それはまさしく
「…ジュン!?」
そう、我が愛しの息子ジュンだった。
「な、何でジュンがここに!?あれ、これ夢!?ネジキ、ちょっと殴って!」
「わかりました。せいやっ。」
そういうとネジキはホントにおもいっきり私の頭を殴った。少しは手加減しろよ。後で覚えとけ…じゃなくって、
「ゆ、夢じゃない…。ジュンーっ!」
感極まった私は嬉しくなり、ジュンを思い切り抱き締めた。
「わっ!な、なんだってんだよー、ダディ!苦しいってば!」
「ジュン〜!会いたかったぞジュン!」
そのまますりすりと頬擦りをすると、ジュンはくすぐったそうに身じろぐ。
そんな私を見ていたネジキは、はぁ、と溜め息をつき
「…じゃあ、後は親子二人で。」
と、呆れた様な顔をして出ていってしまった。
「あぁ!わざわざありがとう、ネジキ!」
私はそんなネジキに礼を言うと、改めてジュンの方を見た。
「ジュンー、ごめんな?しばらく会えなくって!最近チャレンジャーが多くって…。」
「ううん、オレ、ダディが強いこと知ってるから平気だよ!」
「ジュン…!」
聞いたか今の。我が子ながらなんて健気で可愛いんだ!
「…だから、忙しいと思ってさ。たまにはオレから会いに来たんだけど…。ダメだった?」
いやいやいやダメなんかじゃない、むしろ嬉しすぎてダディ泣きそうだよジュン。
「いや!ダディ、ジュンに会えて嬉しいぞ!」
「ホント!?なら良かった!」
パアッと寂しげな表情から一転、いつもの明るい表情に戻るジュン。
そんなジュンを見てると、自然と私も笑顔になった。
「わざわざ会いに来てくれてありがとな、遠かっただろ?」
「んー。でも、ダディに会えるなら全然平気だから!」
「〜っ!ジュンは優しいなあ!」
ちゅっ、と鼻の頭にキスを落とす。
するとジュンの顔がほんのり赤く染まった。
「うー…。なんだってんだよー、ダディ!」
「はっはっは、すまないすまない。ジュンがあまりにも可愛かったから!」
「は、恥ずかしいこと言うなってばー!」
わたわたと慌てるジュンに愛しさを抱きつつ、またしばらくジュンのおかげで頑張りそうだ、と考えながら私は腕の中のジュンをより一層抱き締めた。
(あ、ネジキ。今日ジュンもこっちに泊まるから)(ワーオ…)
ダディは忙しいと家帰ってないイメージ。タワーとかに寝泊まりしてそう。