バトルサブウェイの昼休み。

車掌室でノボリが本を読んでると、いきなりクダリが

「じゃんけんしようよ。」

などと、意味のわからないことを言い出した。

「…クダリ、私達は大人なのですからその様な遊びは、」

「あれ?ノボリってば負けるのが怖いの?」

ぴくり。

クダリのその言葉にノボリの眉根が動いた。

「勝ってその先に何があるか〜とか言ってる割には臆病なんだね。じゃあこの勝負はボクの勝ちで、」

バタン、と車掌室に大きな音が響く。

ノボリが先程まで読んでいた本を閉じた音だ。

「…なめたことを言わないでくださいまし。」

ゆっくりと、怒気を含んだ声でノボリが立ち上がる。

どうやらクダリがノボリの闘争心に火をつけてしまったようだ。

「ん。じゃ、やろっか。」

しかしクダリとしてはそれが狙いだったのか、いつもと変わらない笑みを浮かべている。

(…そうです私が負ける訳ありません。ましてやこんな下らない勝負事で…。)

「それじゃ行くよ。一回きりの真剣勝負。」

「さーいしょはグー」とクダリが掛け声をかける。

「じゃーんけん。」

と、ノボリが手を出そうとしたその時。

「エロ本何冊持ってる?」

「…はい?」

素っ頓狂な声を上げるノボリと、不適な笑みを浮かべるクダリ。

(…えーっ、と…?)

自分はパー、クダリはグー。

見方を変えると自分は5。クダリは0。

ということは、つまり。

「うっわー、ノボリってば五冊も持ってるの?へんたーい。意外にむっつりだね。」

ケラケラと笑うクダリ。

その瞬間、ノボリは全てを察した。

(…ハ メ ら れ た !)

「く、クダリいぃぃぃ!!」

「あははー、むっつりノボリが怒ったー。」

その日のギアステーションでは、昼休み中ぐるぐると追いかけっこをするサブウェイマスターが見れたとか。



「…クダリさんも幼いけど、ノボリさんも結構子供だよなあ。」

「それ、本人達の前では絶対に言えないけどな。」

そんな鉄道員達の会話を知るよしもなく、バトルサブウェイの昼休みは過ぎていった。







クダリさんにむっつりと言わせたかった。後悔はしていない。