そのいち、ボク以外に無防備な顔を見せないこと。
そのに、なるべくボク以外と話さないこと。
そのさん、もうボク以外と会わなくていいよ。

「…何ですか、それは。」

「ボクから、ノボリに守ってほしい3つの条約。」

三本指を突きつけて言うと、ノボリは普段から仏頂面な顔をさらに歪めてため息をついた

「どうしたのノボリ。スマイルスマイル!幸せが逃げるよ?」

「常時笑顔な貴方様と同じにしないでくださいまし。それに幸せを逃がしているのは誰ですか。」

…冷たい表情でぴしゃりと言い放たれ、なんだか少し悲しくなった。
だってだって、ノボリってば少し無防備すぎるんだもん。

こないだだってトウヤがやらしい目でノボリのこと見てたの気づいてないの?
トウコだってノボリのことは尊敬してるっていってたけど、実際どう思われてるかなんてわからないよ。

「だから、ね。」

「ね、じゃありません。おバカさん。」

こつん、と握り拳でおでこを小突かれる。
ボクは真剣にノボリのことを心配してるのになあ。

「…それでは、私は仕事に戻ります。貴方様も早く戻りなさい。」

なんていい始めたノボリは、いそいそと黒のロングコートに袖を通し始めていた。せっかちなんだから。

「はーい。」

なんだか納得いかなかったけど、お仕事に関してはノボリ怖いし早く戻ったほうが得策だろうと思い踵を返した。

カツカツと靴の踵を鳴らして歩くノボリ。

兄弟なのに、こうも色っぽく見えるのは何でだろ。

…だから、周りから狙われてるんだってば。

やっぱりノボリが無防備な分、ボクがちゃんとノボリを守らなくっちゃね!
なんてったって、ボクの大事なお兄ちゃんなんだもん。

「ノボリ、大好きーっ!」

と、大声で叫んでやるとノボリはびっくりして震え上がった。

「〜…っ!おバカさんっ!!」

顔はよく見えなかったけど、きっとオクタンみたいに真っ赤ということを赤い耳が物語っていて、なんだかボクはひどく可愛らしいと思ってしまった。
そういう顔が、無防備で可愛らしいんだってば。


(…あれ、ノボリさん何かにやけてませんか?)
(んー?気のせいじゃない?ノボリはいつもと一緒だよえへへー!)
(…また何かあったんだな)







▲のこと大好きな▽を目指したはずが失敗感駄々漏れ