「エメットの痴れ者!Fuck、fuck!」
「それはこっちのセリフ!インゴの堅物!Bye!顔も見たくない!」
「っ〜!もう知りません!」

バン!

インゴが力任せに、音を立ててドアを開いた。

「…お前なんて、もう勝手にしなさい!」
「うん、そうさせてもらう!スッキリするよ!」

互いに捨て台詞を残し、睨み合いをしながら部屋を出るインゴ。

カツカツと靴の踵を鳴らして、ギアステーション内の廊下を進んだところで、不意に足を止め

(…また、やってしまったか…)

はぁ、と重い溜め息をついた。

(違うのです。ワタクシは決してあの様にするつもりは…)

先程のエメットととのケンカを思い出し、それを打ち消すかの様に首を振るインゴ。


ケンカの原因は、本当に些細なことだった。

先日、仕事終わりでその日最後のバトルを終え、ギアステーション内でエメットは一人の女性に話しかけられていた。
どうやら彼女はエメットのファンだったらしく、エメットもそれに気を良くしたのか彼女と良い雰囲気で会話を続けていた。

そんなエメットを見て、インゴは

「先程の女性は、誰なんですか?」

と、問い詰めるかの様な口調でエメットを問い質した。

それに対しエメットは

「ただのファンの子だよ。」

と答えたが、インゴはそれが納得いかなかったのか不機嫌そうに顔を歪める。
どうやらインゴは、エメットが女性と話したのが気に入らなかったらしく心の奥で小さな嫉妬心が生まれていた。

「…エメット。今は勤務中です。いくらあの方が貴方様のファンだろうと…」

遠回しな指摘をし、自分の嫉妬を隠すかの様にエメットに説教を始めるインゴ。
そんなインゴを見て、エメットは不適に笑い

「インゴ、ボクがあの子と話してたの、嫌だったの?」

と、核心をついてきた。
本当のことを言われ、言葉に詰まるインゴ。何とか否定しようと口から出た言葉は

「そんな訳ないでしょう!?自惚れるな!バカっ!」

と、罵り混じりの否定の言葉だった。

「…はぁ?何?その言い方」

そのインゴの言葉に、気を悪くしたのか、エメットはいつもの笑みを消してインゴを睨むように見る。


そして、しばらくの間口喧嘩が続き、今の状況に至る。



(…あぁ、我ながらアマノジャクな自分が嫌になる)

とぼとぼと、長い廊下を歩くインゴ。
そして自負の念に耐えきれなくなったのか、ペタリと柱に寄りかかり、座り込んだ。

(…エメットはまだ、怒っているのでしょうか)

もし、ワタクシのことが嫌いになってたら。もう一緒にいてくれなかったら。
そう考えるとインゴは言い様のない寂しさに襲われ、背中を震わせ始めた。

「エメット…。ごめんなさい、エメットっ…」

「…インゴ?」

「っ、!?」

不意に名前を呼ばれ、顔を上げるインゴ。
そこには、きょとんとしたような顔のエメットが立っていた。

「なっ…!?お前、何でここにいるのですか!?」

グイ、とコートの袖で目元を拭うインゴ。

「…インゴのこと気になって追い掛けたんだ。そしたら、インゴ泣いてたみたいだから」

「な、泣いてなんか…」

「ううん。ボクのせい。ごめん、インゴ」

ぎゅ、とインゴを抱き締めるエメット。

そんなエメットの行動に、インゴは先程まついざけていた自分がバカらしくなり、優しく抱き締めるエメットの耳元で言った。

「…ワタクシこそ。すいません、でした…。」

ちゅ、とインゴはエメットの頬にキスを落とす。
二人は互いに見つめ合うと、、満足したのか顔を見合わせ、ニコリと笑った。



(…て言うかインゴ、やっぱり嫉妬)(そ、そのことはさっさと忘れなさい!!)












インゴさんに嫉妬させ隊。
英語を喋らせたかった感が駄々もれ