「あれ、どうしたのそのポケモン。」
ボクの目の前に立つハチクさんの後ろに隠れる一匹のポケモン。
「…ユキメノコという、シンオウのポケモンらしい。」
「そんな遠いところのポケモンが、何でこんなところに?」
「トウヤに貰ったんだ。」
そういうと、ハチクさんはユキメノコをボクの前へと連れてきてくれた。
恥ずかしがりやなのか人見知りなのか、もじもじしている。
「初めまして、ボクはアーティ。宜しくねユキメノコ。」
紳士的な動作で手を差し出すと、ユキメノコはおずおずと手を握り返してくれた。氷タイプということもあってか、冷たい、雪のように白い手だ。
「キレイな子だね。」
「あぁ。だが、このユキメノコはシンオウから来たのではないらしくてな。」
「え、じゃあ何で?」
「タマゴから孵ったらしい。」
そうなの?とボクが聞くと、ユキメノコはこくりと頷いた。
「…シンオウかー。ボクも行ってみたいなー。」
シンオウ地方に関しては、ボクも興味がある。
虫タイプの四天王がいるとか、素敵な虫ポケモンがいると聞いてずっと行ってみたいと考えたところだ。
「ねーハチクさん。今度、一緒に行きません?」
…まぁハチクさんは忙しいし、どうせ無理だろうな。
と、ダメ元で聞いてみると
「あぁ、構わないぞ。」
「…え?」
今、構わないって言った?言ったよね?
ハチクさんの言葉に関しては、タブンネの聴力を越えてると自負してるはずなのに。
「え、い、良いんですか!?」
「あぁ。このユキメノコにも自分の故郷を見せてやりたいし、それに…。」
少し俯いて、ボソボソとハチクさんは言った。
「…たまには、お前と二人きりで旅行というのも悪くないだろう。」
言い終わると、真っ赤になり黙ってしまった。
正直、それは反則です。可愛すぎます。
「は、はいっ!絶対行きましょう!楽しみにしてますね!」
「…あぁ。」
はしゃぐボクと、くすりと笑うハチクさん。
そんなボクらを見て、ユキメノコも静かに微笑んでた。
(…その前に、仕事を終わらせておけよ)(あうぅん…)
ユキメノコいなくてもよくね?と思ったら負け。
ハチクさんマイチェンでユキメノコ使ってくれないかな…似合うのに