bun | ナノ




オヤジみたいなくしゃみだね


※『あ、俺×××だから。』提出作品
※臨也と新羅が腐男子
※来神時代








「『臨也…、俺もう我慢できねぇよ…』」

「…おい」

「『ちょ…やあ、やめっやだあ…!シズちゃ…ひぁっ』」

「……おい手前」

「『ん、好きだ、臨也、愛してる…』」

「………」

「『ああぅ、俺も好」


「…おいこら手前ちょっと待てつってんだろ」

「何?今すごく良いところなんだけど」


病気でベッドで寝込んでいるシズちゃんに本を読み聞かせなう。








「その変な小説を俺と手前の名前に置き変えて朗読すんじゃねえよ!ばか!死にさらせ!」

なんとかは風邪をひかないというが、どうやらそんな話は全くもっての迷信らしい。
珍しくシズちゃんが学校に来てないと思ったら熱出して休んでいるだと。この俺が飛んでこないわけがない。

シズちゃんは案の定自分の部屋のベッドで寝込んでた。冒頭のように怒鳴りちらして、俺には元気そうに見えるけど。よく見ると顔も真っ赤だし息も荒いし、普段が頑丈な彼が病に侵されるというのは結構堪えるものなのかもしれないね。もしかして身体の内側は弱かったりするのかも?

しかし、弱ってるシズちゃんなんてさぞかし良いネタになるんだろうなぁ。写真とか撮ったら売れるかな?ちょっと洋服はだけさせたり、俺が一緒に写ってさ。むしろ自分が欲しい。


「え?これ置き変えてるんじゃなくて、新羅がこの間自費出版した静臨小説なんだけどなぁ。」

意味分からないと眉をひそめたシズちゃん。まあ分からなくても全然構わないけどね。

「ていうかシズちゃん大人しく寝られないから本読んであげてるのに何で寝ないの?」

「…本読んで欲しいとか言ってねぇし。まず来てっつってもねぇし」

「『あ…っもう……シズちゃんたらそんなに舐めて…発情期のわんちゃんみたいだよ…』全く新羅はギャグみたいな台詞ばっか書くなあ…」

「いい加減やめろ。殺されたいのかって言ってるだろうが!」

「むぎゅっ」


ぜえぜえと苦しそうなのにシズちゃんはベッドから起き上がり、俺にラリアットをしてきた。やっぱり元気なんじゃないか!こいつ本当に熱出てるのか!?
当然避けきれなくて、俺は椅子ごと床に倒れこむ。尾てい骨打った痛すぎわろた。

「っ…いったぁ…もうシズちゃんったらそんなに怒って…縄張り争いのサルみたいだよ…」

「ふざけてる場合か、こんなもん破り捨ててやる」

シズちゃんの手にはいつの間にか新羅の静臨小説を持っていた。

もしかして…え、やだやだ、待って。

「あああっやだー!返せ返せ!まだ途中までしか読んでないのにいいい!」

俺が急いで起き上がったのと、シズちゃんが本に力を入れたのは同時だった。

「ふん!」

「あああああーー!!!」


600円があああ!
せっかく新羅に頼みこんで貰った小説があああ!!
ぎゃああ一破りどころかビリッビリに裂いてるううう!

はらはらと小さくなってしまった紙くずを目の前に散らされる。
シズちゃんを見上げると、熱で息を荒げながらも得意顔をしていた。どや!じゃねえよばかシズ。し、信じらんない…。

「はっ…これでもう懲り……?…臨也…?」

まだ半分も見てないのに…。
今日こそは絶対に許さない!

「…必殺押し倒しの術」

「っ!?」

腐男子ナメたらあかんねん。

熱で弱っているシズちゃんを押し倒す事など簡単だった。どうやらシズちゃんはさっきのラリアットと本を引き裂くことで体力を使いきったみたいだ。彼の腕をベッドに押さえつけるのがこんなにも容易だとは。

「…っざけんじゃねぇよ…どけ」

「シズちゃんが俺の大切なもの破ったんだから、責任とってくれるよね?」

「はぁ?」

「あの小説の続きどうなっちゃうんだろーなぁー俺はシズちゃんに何されちゃうんだろうなあー?」

そう言いながらシズちゃんに覆い被さって、額同士をくっつけた時だった。

「させてたまっかよ!」

「ひょあ!!」

うおお今変な声でた!
と驚いている間も無く、気付けば俺は、

シズちゃんに押し倒し返されていた。

なにこの展開!BLなのBLなの!?熱が出たカレの理性が切れちゃって的なあれなの!?

「手前俺が風邪ひいて寝込んでんのわかってんだよなぁ…?」

「もちろん」

「なのにこう迷惑ばっかかけてくるってのは…」

まるでキュピーンと効果音を立てたようにシズちゃんの目が光る。


「俺に殺されても良いって事だよなぁ?」


ヤバい、


ヤ ら れ る !(殺人的な意味で)




―カシャリ

「!?」

そう思った時、機械的なシャッター音が部屋に響いた。

「!…あっ!」

「臨也だけじゃあ不安だと思ってきてみたら案の定、一体何やってるのさ。2人とも落ち着いて」

右手に携帯、左手にコンビニの袋をかかげた新羅が、にやりと笑いながら部屋に入ってきた。

「新、羅…どうして」

「あ、静雄、鍵開いてたからお邪魔するよ。あとヨーグルトと棒アイス買ってきたから食べてね」

「……叱ってる割には今写メ撮らなかった?」

「うん?何か言ったかな?」

「いえ、食べ物チョイスGJ」

「ありがとう。でもこれ選んだの僕じゃなくて門田君なんだよね」

この狙ってるような食べ物のチョイスはドタチンだと…また色々と考察し甲斐のありそうな…。

「よう、悪いな静雄、勝手に上がっちまって。新羅と臨也が揃うとどうも不安でな」

「ドタチン!」

「……門、田」

「つうか、なんだその体勢…」

ドタチンの呆れたような声に、俺の今の体勢を思い出す。
そうです。シズちゃんに押し倒されて、そのままでです。突然の訪問者に未だ硬直しているシズちゃんを見上げると、なんとも辛そうな表情をしてぼーっとしていた。まあ、熱出てるもんな。

「シズちゃん…大丈夫?ほら、そろそろどいて」

「…………」

「…………シズちゃん?」

「ふ…」

「ふ?」

「ぶぇっくしゅ!」

「!」

ちょっとこいつ人に向かってくしゃみしたぞおい!常識外れ!最低!なんだこれ!くしゃみプレイ!?全く流行らない!

「って、わっ」

なにか文句の一つでも言おうと口を開くと、シズちゃんは体力の限界を向かえたらしく身体はそこで崩れた。
ということは、当然俺にのしかかかるような感じで。シズちゃん重くて、熱くて。

「えええっ何してんの!」

「…いざ………も、むり、だ」

「いいよいいよ、もっとやれ」

「そんな事言わないで新羅あ!シズちゃんどかしてよー!」

「新羅、お前医者の息子ならせめてなにかしてやれよ…」

「ええ…でも萌えだし」

「萌えてる場合か」

新羅とドタチンのコント聞いてる場合じゃない!
ていうかシズちゃんのエッロい息遣いが俺の首にかかって妙な気分になる!
静臨なんて二次創作の世界だけかと思ってたのに…。無駄にドキドキするとか信じらんない…!!


「シズちゃんっどけってば!」

ぐいぐいと肩を押しても俺も無理な体勢なため先程のようにシズちゃんを押し返すことも出来ず。

「………」

「寝た!?寝たぞこの野郎!」

しかも力尽きたシズちゃんはすやすやと夢の世界に旅立ってしまった。

「気を失うほど静雄の体力を限界までに引き出した臨也なのであった」

「熱出てるなら寝かせるのが得策だよな…でもせっかく食いもん買ってきたのに…まあいいか」

「うん、俺も門静見たかった…」

「………なに言ってんだお前」

「だってその食べ物のチョイス……ああもう良いから早く2人ともシズちゃんどかしてよー!」

「はいはーい」

ドキドキドキドキ
この無駄な胸の高鳴りはシズちゃんがきちんとベッドの元いた場所に戻った時以降も続いていて。
もしかしたらシズちゃんのくしゃみがなんかそういう要素を含んでいるんじゃ…、と考えていたら新羅に「静臨ぁ!」と叫ばれてしまったのでとりあえず新羅にはシズちゃんのためにドタチンが買ってくれた棒アイス(バニラ味)を全力で新羅の口に突っ込んだ。「やらぁつめひゃいよおおっ」てははっ新羅えろいえろーい。



オヤジみたいなくしゃみだね

眠っているシズちゃんにそう呟いて、この気持ちを紛らわした。



まあ次の日は風邪ひきますよね。














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腐らしい文章を意識して書いてたら日記みたいになってしまいました←
臨也が思った以上に腐男子にならなくてあばばば…でもすごく楽しかった!


いれたかった後日談を…↓



「臨也……新羅はともかく、あまり静雄を煽るんじゃねーぞ」

「へっ?」

「あの時もう少し俺らがくるのが遅ければ…………まあ良い、気をつけろ」

「ふふふ」

「えっ?新羅えっ?何笑っ…え?」



実はドタイザもいれたかったとかそんな。
腐のくせに自分のこととなると天然な臨也かわゆす。