今岡くんはとにかく可愛い。

 丸っこい後頭部が可愛い。前髪が金髪じゃなかったら不良には見えないくらい顔も可愛い。お鼻が丸くてかわいいから指で潰したい。眠そうな丸い目とかすごくカワイイ。笑うとへら〜って柔らかくてかわいい。今岡くんって人間を構成する部分が全体的に丸くて本当に可愛い。
 可愛さだけでもK点越えなんだけど野球やってる時ホントかっこいいから。意外と勇ましくて体張るからハラハラするけど。デッドボール顔に当たったときは相手に持ってた双眼鏡ブン投げてやろうかと思ったけど。鼻血出ちゃってて可哀想だった。鼻血出てる今岡くんはちょっとセクシーだった。だめだ。私はもう人としてダメかもしれない。

「アンリちゃん何してんの」
「ブログ書いてる」
「えー見せて」
「だめ、これは墓場まで持って行くから。誰にも見せないブログなの」
「それってブログの意味あるの?」
「文字書くのがめんどーなだけ」

 不満そうに尖らせた唇が可愛くて飛びつきそうになったのを携帯を握りしめることで必死に堪える。今岡くんがベッドに背を預けてジュースを飲んだ。小柄に見えるけど流石に男の子で、喉仏のところがゴクンと動く。私の喉もゴクンと鳴った。
 今岡くんはほんとにかわいい。
 本人がともすればそれを自覚していないということが本当に厄介で、もし男女が逆だったなら私は今岡くんにどんな無体をしていたか分からない。女でよかった。多少セクハラしてもスキンシップになるし、と思いながら隣に座る。

「んー?」
「んん〜〜〜」
「甘えてる?」

 いえ、補充です。
 猫でも撫でるように前髪を撫でてくれる指が、私の頭を浮かせる。熱がこもる。試しにぷいっと顔を背けてみると追いかけるように頬の上を滑った。この手は私が構いすぎると逃げるが、逃げると追ってくる。人慣れしていない猫みたいだ。
 しかし私は構われるよりもどっちかっていうと構いたい。構い倒したい。逃げたり甘えたりしてるうちにその気になってくれた彼が、徐々に体重をかけてくる。ころんと無抵抗にカーペットに転がったら、今岡くんは慌てて床に手をついた。

「……お、押し倒しちった」
「………っ」

 やべーって顔してる。きゅんと胸が弾む。ねえ今岡くんが可愛い。いつものことだった。でも今日はキュートさがカンストしてるよ!自分の頬が熱くなるのを感じながら、同じように赤くなっている今岡くんのほっぺを撫でる。柔らかい。鼻を撫でて、唇の端から端まで爪で優しく触れる。堪らなそうな表情。私も堪らなかった。
 どちらからともなくキスをする。
 柔いものにかぶりつくような仕草まで小動物みたいに可愛くて可愛くて、何度か唇を合わせているうちに勢いづいて体を起こし、今度は私が今岡くんを押し倒す。マウントをとって胸元に抱き着き、思う存分頬をすりつける。

「あ〜〜〜も〜〜〜〜〜今岡くんがかわいいよ〜〜〜〜〜〜」
「あー絶対こうなるよね、最後は」
「私こんなに今岡くんが好きで、もし今岡くんがいなくなったらどうなってしまうんだ……って最近よく思うもん」
「いなくならないから考える必要ないよ」
「ひえッ」

 軽く笑った顔にやられて硬直すると、あれよあれよという間に元の体勢に戻されていた。私は両手で顔を覆って悶えるしかない。天上天下追随を許さない可愛さを持ってるくせに男前とかほんとうに勘弁してください死んでしまいます。
 今岡くんがかわいい上にかっこいい、まる。今日のブログは書くことに困らなそうだった。



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