「怖い」「冷たい」
「得体が知れない」


そんなふうに言われている無愛想な男が、自分にだけは柔らかな笑顔を零す。好かれている、愛されているとこの上なく実感する瞬間である。
彼が可愛がっている後輩にも尊敬する先輩にも向けられることのない、自分だけのもの。胸の奥にある独占欲という名の重い鉛が、彼に微笑まれるたび嘘のようにすっと無くなっていくのだ。


私は友にこの底に沈殿する重い感情を見せることはない。愛嬌と見なせる程度に抑えて交友関係を保ってきた。彼らなら或いは己の本性を受け入れてくれるかもしれないが、しかし彼らの重荷となるこれを曝す気にはまだなれなかった。
ケイはこんな私をよく知っている。・・・というよりも、私がここまで独占欲が強く寂しがりになってしまったのは彼の所為でもあると思う。どうしようもなく寂しくなって、不安になる時、彼は何故か私を見つけだし、ぎゅうと抱き締めてくれる。いつだって彼の慈しみを一身に受けることは私をこの上なく満たすのだ。


「私はケイがいなくなったら死んでしまうかもしれない」
「そう。なら大丈夫さ、無いから」
「・・・無いって」
「私が三郎の前からいなくなるなんてことはありえないってこと。三郎が生きて望む限り私はお前の傍に居るだろうし。尤も頼まれたって離れつもりは無いけどね」
「そ、うか」


頬が熱くなるのが自分でもよくわかる。困らせたかったのに、と尖らせた口にかぶりつくように接吻をされる。可愛らしいこと、と笑むケイに幸せで緩む口元。ああ、ああ!全く!いつもの余裕綽々の鉢屋三郎は一体どこに行ってしまったんだ!変装名人と謳われる私と今のとろけきった私、どちらも偽りではないのに何故こうも違うのか?ああ、全く全く!




じゃあ全部受け止めてよ!
(君の所為なんだから)





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