◆『Pieris』あとがき

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。このあとがきは非常に長くなっております。また、当然ですがお話のネタバレを強く含みます。加えて、注意書きで触れていたとあるオマージュ元作品についても言及しておりますので、それでも構わないという方のみ読み進めていただければ幸いです。


▼Pieris(ピエリス/馬酔木)
花言葉は、「犠牲、清純な心、二人で旅をしよう」

偶然この花言葉を知って閃いたのが本作品でした。そこから最初に膨らませたのが、第一部のようにトビと二人旅をするお話です。
しかし当然ながら、トビ(オビト)と平和に旅をするなんていうお話は、それこそパラレルワールドでもなければ成立しないお話です。そこで考えたのが、“夢主の無限月読世界”という設定でした。

▼二部構成
そういうわけなので、無限月読パートと現実世界パートに分ける二部構成ができあがりました。どちらかと言うと第二部ありきで第一部が成立している関係なので、第一部はかなりあっさりしていたと思います。第一部は、第二部との対照要素を繋いでつくったという面が大きいので、比べながら読んでいただけるといいかもしれません。

▼夢と現実
一部と二部の対照要素、言ってしまえば現実での願望が夢の中で叶っているという部分ですが、例として名前の呼び方、キス、花飾りの件などが挙げられます。
一方で、夢主が無限月読の中でも、現実と変わらぬ形で思い起こしている場面もあります。トビとの出会いの場面、花飾りを贈られた場面などがそれです。これらの現実と違わぬ部分は、全て“無限月読の中で見ている夢”として描写しています。つまり、現実に対する夢(無限月読世界)、その夢(無限月読世界)の中で見る夢=現実世界、という表裏構図になっているわけです。第二部(現実)の最後が「おやすみ」で終わり、第一部(夢)の最初が「おはよう」で始まるのもこの辺を意識しています。

▼11月11日
第一部では11月11日という日付がループすることで、夢の世界ということを暗示させています。夢の中では夢主の求める理想の世界がぐるぐるぐるぐるループしているわけです。そしてその11月11日は夢主がトビと初めて会った日であり、最後にその日付のカレンダーを見て眠りに就きます。
ちなみにこの日付は特に何日でもよかったのでサイトの開設月日を使ってみました。ちょうどこの一月と一日前が原作でいうナルトの誕生日=最終決戦日前後にあたるので、その辺でもう少し話を膨らまそうかと考えたときもありましたが、長くなりすぎるのでやめました。

▼写輪眼という蛇足
ところで、夢主をわざわざ写輪眼持ちという設定にして、あまつさえ最後にはオビトの記憶を消そうとするという無茶な設定に走ったのには、理由があります。
最大の理由は、“原作との違和感を軽減したいから”です。変な話ですが、私はドリーマーのくせに原作での設定を非常に気にする性質なんです。そしてオビトというキャラを考えるに、どうも深い仲になった人物がいたなら、彼は原作のように最終決戦を迎えるだろうか、という壁にぶち当たりました。その問題をクリアし、オビトが原作通りリンちゃんと再会して綺麗な終わり方をしてもおかしくないようにするため、夢主の存在を抹消するというステップが必要でした。
そこで便利なのが写輪眼という設定。元々トビの写輪眼コレクションを話のネタにしたいと前から考えていたので、そこと絡めて話をつくっていきました。夢主の設定自体も、当初は全くあやふやだったのですが、ここから医療忍術であったりという若干特殊傾向な設定が付け足されていきました。

▼空っぽの愛
元々私自身はこういった特殊設定が苦手な方で、今回も自分自身抵抗がありました。が、夢主にこの設定を付加したことで、結果的にオビトとの関係が自然に描写できるようになりました。
原作でオビトが“自分の胸は空だ”と言っていたのがとても印象に残っているのですが、夢主も同じように空しさを内包しています。それを哀れむオビトも、本当は自分たちが似ていると自覚しているので、夢主を哀れむことは自分自身を哀れむことになります。そのために、時として暴力的な関係に陥ってしまうわけです。

▼“トビ”と“オビト”
私が他の話を書くときにも毎回困るのが、夢主がどんなきっかけでオビトの過去やその名前を知るか、という点です。原作オビトは多分暴かれない限り自分からは“マダラ”までしか名乗らないかな、と思うんですね。それを解決するのにも写輪眼設定がちょうどよく嵌ったので使いました。ついでに自分で否定している“オビト”という名を人に呼ばせたりはしないのかなと思ったので、その部分も盛り込みました。

▼『新世紀エヴァンゲリオン』
さて、後半の心理描写については、見出しに挙げた通り、オマージュ元であるアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に依る部分が大きいです。
元々NARUTOの月の眼計画は、エヴァの人類補完計画に似ている、と散々言われてきました。私自身真っ先にそう感じた一人です。そして、オビトの動機がゲンドウと酷似している、というのも、両者を知っている人なら少なからず思うことではないでしょうか。
けれども、私はオビトをゲンドウというより、主人公であるシンジとして捉え描きました。オビトが10代から引き摺り抱えている破滅的な悩みは、それこそ10代のシンジが持つ悩みに重なると思ったからです。

▼「If I can't be yours」
引き続きエヴァ話です。さて、第二部のタイトルは、その通りエヴァの旧劇場版で有名な楽曲からつけたものです。他にもエヴァの挿入歌に関しては、監督自ら歌詞を書いたという有名な楽曲がいくつかあります。エヴァはその監督自身の内面を映した作品という面もあり、シンジの内面は監督の悩みを反映しているとも言える内容でした。そんなシンジ=監督の書いた歌詞に対して、以前ネット上で、「30にもなる男がこんな歌詞を書けるなんて気持ち悪い」という意見を見かけたことがありました。
ここまで書くともう言いたいことは分かりそうですが、この言葉、オビトにぴったりじゃないかと驚いたんです。それがオビトをゲンドウではなくシンジと重ねる決定打になりました。
ちなみに第一部の方も言わずもがな「Fly me to the moon」お借りしました。「(旅で)遠くへ連れてって」、と「月へ連れてって(=無限月読の夢の世界へ連れてって)」、のダブルミーニングになっています。

▼物語のその後
とまあ三十路になっても10代で精神が停止しちゃっている(というかある意味破綻している)男ですから、まともに恋愛できなくても仕方ありません。それでも夢主は、偽とか本物とか気にせずオビトを愛してしまいます。
そんな夢主をどんな結末が待っているかは、みなさんご存知の通りなわけです。原作に従うなら、そもそも彼女が望んでいた無限月読はオビトではなくマダラが発動したものですし、オビトは改心してリンに再会し昇天してしまいます。
流石にそう考えるととても物語のその後を描ける気がしないので、最後は夢主が無限月読にかかるシーンで終わる、と最初から決めていました。

それでも色々と思うところがあるので、ここから先は少し番外編を書いてみたいと思っています。番外編なので、もう原作からは多少脱線した設定でもいいかな、と考えていますが、よろしければもう少しお付き合いください。

それでは、こんな長いあとがきまでお読みいただき、ありがとうございました。

2015/01/11


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