「うんしょ、っと」
重たいダンボール箱をアジトに運び込む。今日は私以外誰もいないから絶好のチャンスだ。自室に運び込んだ箱に詰まっている大量のそれを確認し、額に浮かんだ汗を拭う。
「あとはこれを…」
部屋を出たところで突然ズズ…と目の前の空間に歪みが現れて焦る。今日は留守じゃなかったの。
「おい、何をしている」
「あえ、と、な、なんでもないですよ…マダラ、さま」
以前まではトビという私の可愛い後輩だったのに、このぐるぐる仮面は、とんでもない正体を隠していた。うちはマダラだなんて、馬鹿げている。本当は嘘なんじゃないかって今でも少し期待しているのだけど、なんだかんだで私たちは上下関係が逆転しつつも不思議な緩い協力関係を保ち続けていた。
「あっ待って!」
それにしてもマズい、ここから離れなければと思案しつつ明後日の方向を見ていたら、マダラさまは私の思考を読んだかのように背後のドアを乱暴に開けてズカズカと私の私室に入ってしまった。
「……なんだ、これは?」
ああ、もう言い逃れできない。全部内緒で準備したかったのに。ダンボール箱に手をかけて中身を覗きこんだ背中に、なんと声をかけていいのやら言いあぐねていると、
「…フ、お前、中々高尚な趣味を持っているな」
「…?」
「見かけによらずハードなのがお好みだったか」
次々とわけの分からない言葉が飛び出してくるので、私はハテナマークをいくつも頭の上に浮かべる。困惑を隠せずにいると不意にマダラさまに身体を持ち上げられて、そのまま奥の寝台に押し倒された。
相次ぐ意味不明な展開にえ、え、としか声を出せずにいると、マダラさまが箱から取り出したロウソクを私の顔の前にちらつかせる。
「なんだ、こうするために用意したのだろう?」
それから彼の言わんとすることをやっと理解した私は、このとんでもない誤解を解くために多大な労力を費やしたのだが、結局最終的にこれ以上ないくらいに笑われ恥をかくことになった。
「だっだから…っ!マダラさま誕生日だからっ…今度こそちゃんとロウソクを用意しなきゃって…!」
「…フ、くくっ……お前、それを本気で言っているのか…」
だってそうじゃない、トビのときはなぜだか「あと20本」と言っていたけど、うちはマダラだったら、そんな数で足りるわけがない。だからよくよく考えてちゃんと十分足りるような数を用意したのに。
ひとしきり笑ったマダラさまはその日ひどく機嫌が良かった、今度用意するときも30本ほどでいいと言われたけどどういうことだろう。トビのときも大概だったけど、常々思う、私にはマダラさまの考えることはよく分からない。
ちなみに当然用意したロウソクは使わなかった、というか使えなかった。だってそもそもこんな数のロウソクどれだけ巨大なケーキになら全て立てられるんだと、マダラさまにそう言われてはじめて気付いた私なのだった。
「せっかくだから今度二人で使うか?」
「使いません!」
---
偽マダラさまと蝋燭プレイしたいです(真顔)
2015/02/10