うつくしいひと、あなたはとっても美しい人。
それまで秘められていた仮面の下の素顔を知ったとき、私は言いようのない衝撃を受けたの。

だからね、それだけじゃなくて、あなたの傍に置いてもらえて、褥を共にすることを許されて、私は舞い上がるような思いだったの。

そうして一心にあなたを想い続けて、月日が巡るうちに、いつしかあなたの寝息を盗み聞くことだってできるようになった。これ以上ない幸運を授けてくれて、神様ありがとう。

彼が睡眠をとっている光景なんて、はじめて見た日には信じられない思いだったけど、やっぱり人間なんだなあと思って、ちょっぴり不思議な気持ちになった。平気で肌を重ねていた相手に、そんなことを思うのも変な話だけど。


本当は彼の寝顔も覗いてみたい、でもそれはまだ一度も実現していない。
見てみたいと強烈に駆られる裏で、やっぱり見るのが怖い、恐ろしいとなぜだか自制してしまうから。

代わりに、寝息に交じって時たま聞こえてくる、小さな寝言のひとつも聞き逃すまいと耳をそばだてる。


「――リン………」


ああ、嗚呼、あなたはなんて、うつくしいひと。

あなたがその名を呼ぶ度に、私は涙せずにはいられない。

あなたがその名を呼ぶ声を、私が聞くことのできる喜びに、涙せずにはいられない。

“リン”。もう何度も彼が、うわ言で口にしていた言葉。
本人は気づいていないのだろう、そこまで私が気を許されているという事実に、感涙を禁じえない。

この人と私を巡り会わせてくれてありがとうと、何度も神に感謝したくなるけれど、きっと彼は神を恨んでいるだろう。そもそも、神などという存在を信じてはいないかもしれない。

なにしろ、何年も何年も想い続けて、夢にまで見て、いくら隠そうとも表に出てきてしまうほど愛した大切な人を、この世界から奪われたのだから。


あなたのそのひたむきで純粋な想いは、なんて、なんてうつくしいことだろう。
うつくしいものは、時も、場所も問わず、人々の心を奪うものだ。
私の心臓はもう、この人に鷲掴みにされて、死ぬまで離れられそうもない。

あなたの輝きが眩いあまりに、いつしか私の目も、体も、魂までも灼かれてしまうかもしれない。
けれどそれまではどうか、こうして一緒にいさせてください、ねえ、うつくしいあなた。



2015/02/24

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