※企画夢『Oh, My Darling!』(続編)設定です
ああでもないこうでもない、私はひとり扉の前で百面相をしていた。この先の部屋にいるはずのあの人に、どんな顔で会えばいいのか迷っていた。
以前だったら、こんな風に困ることなんてなかったのに。“うちはマダラ”、そう名乗るようになってからのあの人は、どうにもとっつきにくかった。あの頃とは雰囲気も変わって、思わず平伏したくなるような威圧感を覗かせたかと思えば、さらりと耳を疑うような冗談を飛ばしてみたり、鋭い嫌味をグサリと突き刺してきたりする。はっきり言って、どう反応していいのか分からない。
ただひとつ、今回呼び出された要件は分かっていた。たぶん、この間の任務のことだ。あの人は事あるごとにちくちくとお小言を私に言い付ける。先日、どう考えても無茶振りとしか思えない難易度の任務を命じられ、私は案の定失態を演じてしまった。絶対そのことで何か言われるとは、ここ数日覚悟していた。
それにしても、実はマダラとしてのあの人と一対一で顔を合わせるのなんてはじめてなのだ。これまではリーダーや小南、鬼鮫も交えて、複数人で会合するようなことしかなかった。だから今、どうしたものかと悶々としていた。
ああ、この相手があのトビだったなら!まさか私がそう思う日がくるとは、露ほども思わなかった。しかしトビとかいうあれは一体なんだったのだろう、恐ろしくて聞けやしないけれど、暇潰しのお遊びにしたってかなりノリノリでやっていた気がする――と、あらぬ方向へ流れ始めた思考をどうにか引き戻す。
なんにしても、いつまでも迷っていたって仕方がない、嫌なことはさっさと終わらせてしまおう!無理矢理自分を奮い立たせて、勢いをつけて扉を開けた。
「おい、遅いぞ、お前は相変わらずノロマだな」
こちらが一言発する前に、辛辣な言葉が浴びせられ、思わず頭を垂れる形になってしまう。
「も、申し訳ございません」
「何故呼ばれたのかは分かっているな?」
私は先日の任務についてひたすら謝った。考えうる限りの謝罪を重ねてみた。
「……そこまで反省しているというのなら、話は早い。今回はお前に罰を与える」
「……は、あ」
罰ってなんだろう…これまで口でケチをつけられることはあっても、罰されるなんてことは一度もなかった。だからイマイチ想像できずに間の抜けた声が出てしまったけれど、まさかものすごく痛かったり苦しかったりする感じだろうか。それだけは勘弁願いたい…!
バサリ、不意に、下げていた頭の上になにかが降ってきた。急に視界を覆われたので何事かと思い、咄嗟に手で掴んで顔から引き剥がしてみると、いやに滑らかで柔らかい感触。
「……こ、これは……」
「どうだ、懐かしいだろう?」
なんだろう、私は。リアクションを試されているのだろうか。手の中にあるのは、確かに、あの屈辱的な日の思い出の品であった。
「結局やれず仕舞いだったからな」
クツクツと笑いながらこちらを見ている、いや、まさか。まさかですよね?
「ほら、早く脱げ。そして着ろ」
脱がないし着ないですうう!!!とでも叫び出せたらよかったのだが。無言の圧力に閉口してしまう。それにしたってありえないでしょう色々と、この状況は。
「……なんだ?一丁前に羞恥心でも感じたか?」
「………、」
「フン、これはただの罰だ。お前如き小娘が脱いだとて、オレはどうもせん」
必要以上に恥ずかしがられても困る、そんなニュアンスの言葉を付け足されて、カアっと一気に顔が赤らむのを感じた。
確かに、気付いてしまった。気付かされてしまった。最悪のタイミングで。
以前のあのトビだったなら、同じように羞恥心はあったかもしれないが、もっと無邪気で、子供の戯れみたいな感覚だったのだ。けれど違う。今明らかに、目の前のこの人を男として意識して、女として恥ずかしく思っている自分に気付いてしまった。
我ながらどうしてこうなった、そう呪わずにはいられない。ふわふわで真っ白なエプロンをぐっと胸に抱いたまま、どうしようもなく熱を持ってしまった顔を隠そうと俯く。
黙っていると、いつの間にか伸びてきた手が私の肩を掴んだ。
「…お前はオレの助けがないと、何もできないな」
それから脱がされたり着せられたり、やっぱり脱がされたり、着せられたり、散々だった。ついでに大変なことになってしまったエプロンを手洗いさせられるという、謎のおまけつきで。
そういえば、結局あのときのトビは、演技とかでもなくただのこの人の趣味だったのだろうか…。
「…………うそつき」
「なんだ、まだ絞られ足りなかったか」
「…っ、」
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たぶんこういうプレイは偽ダラさまが一番合うなと思って妄想が捗りました。でも勝手なイメージだとオビトさんは裸エプロンとか新婚プレイとかめっちゃ好きそうだと思います。
2015/03/15