※いつにもまして意味不明、支離滅裂「フェアリー」
「え?」
「トビくんマジフェアリー」
「ええ…?」
突然何を言い出すのか、と小首を傾げれば、名無子は間髪入れずに声を上げる。
「それっ!」
「え?」
「それ、そのしぐさ。はぁ…トビくんやはりフェアリーか…」
「ええ…」
呆れのあまり先程から「え」しか出てこない。
「んっ!」
「…うわ、名無子さんちょっと…」
「トビくん、んん〜」
名無子が隣に擦り寄って来て、ぐりぐりと顔を押し付けてくる。
「トビくーん……、」
「はい〜?」
そのまま縋り付き上目遣いでじっと見つめられれば、この先の展開が嫌でも分かるというもの。
「んー……、」
「……」
名無子がそっと瞳を閉じる。じりじりと、距離が縮まり、そして、名無子の唇が――、
「ちゅむ……ってぺぇーッ、ぺっ、ちょっと、何!?」
「えっ、何、って…」
「なんで仮面外さないの!? おかげで仮面にちゅーしちゃったじゃない!?」
「…いやあ、だって名無子さん…」
「いい!? ワンモア! リテイクするからね? 今度はちゃんとちゅーしてね!?」
「……」
「ん、それじゃあ…」
……仕方がない。お望み通りに仮面を外し、再び迫ってくる名無子の顔面を待つ。
「ん……」
ややあってから、ちゅ、と唇がくっついた。
「……これでいいだろう。さぁ、もう満足か」
「……、」
ぐいっと顔を引き離せば、ふるふると名無子の体が震えている。
「……ち、」
「?」
「ちっがーう!! そうじゃない! そうじゃないでしょトビくんは!?」
「……」
「うぅっ……私はトビくんとちゅーしたかったのに……」
「(…チッ…これだから嫌なんだ…)ハア、わかりました…ほら、名無子さん、これでいいですか?」
「…ええ〜…また仮面着けちゃったら、キスできないじゃん…。ねえオビト、オビトって仮面なしでトビくんできないの?」
「……、それは……」
「ってかトビくんって要するにオビトなの? オビトがやってるの? なら仮面外してもできるよね?」
「(…ぐっ…)」
「ねーえーオビトー? トビく〜ん?」
「……、名無子さん……」
「んー?」
「やっだなァもう、名無子さんだって言ってたじゃないですかー! ボクってばもう神出鬼没な気まぐれフェアリーなんで! そうホイホイと出せるもんじゃないんですよ!?」
「えっ……、」
「(くっ、これはさすがに……我ながらキツイか……)」
「――っぱりトビくんって妖精さんだったのねっ!? フェアリーなのね!? サイコー! かわいいっ!」
「……あはっ、あははそうでしょ? アハハハハハハ」
「ん〜、はあぁ…フェアリートビくん大好き…。ねっ、ちゅーしよ?」
「え?」
「ちゅーしよ」
「ええ…」
イザナミか。
おわり
2017/05/17