「ねえ、コンドルは一度つがいになると、一生そのひとつがいで連れ添うんだって」
「へえ?人間よりよっぽど誠実なんスね」
「じゃあトビは?」
「…トビって、鳥じゃなくて、ボクのこと?」
「そう。人間の方」
「うーん。そもそも、つがいもクソもないような気がしますけど。そういう先輩は?」
「私はね。そうありたいって思ってるよ」
もう何も言うなと、いっそその口を塞いでやりたかった。
分かっていたのだ。お前がどんな思いで、その言葉を紡いだのか。
「いつも寄り添って一緒に過ごしたい、一緒にどこまでも飛んでいきたい」
誰と、などと訊くまでもなく。
夢見るように、熱に浮かされるように、言葉は続く。
「たとえ許されなくても、私はずっと付いて行きたい。分かるでしょう?」
“マダラ”。
切り札を切るように。噛み締めるように、呼ばれた名前。
だがお前こそ、本当は分かっていたのだろう?
オレはマダラでもなければ、トビでもない。誰でもない。況してや大空を飛び交う鳥になど、なれはしない。
「――さあ?急にどうしたんスか、先輩」
酷く傷付いた。そんなお前の顔が、どこか嗜虐心を煽ったのを、やけに覚えている。
「………なんでもないよ、トビ」
そして哀れっぽく笑ってみせたその表情が、今も頭を離れない。
もしあのとき、お前の手を取り、共に羽ばたこうとしていたらと。
頭の片隅に残る、馬鹿げた迷いを打ち消した。
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確かコンドルだったと思うんですが…(wiki先生情報)。ちょっとロマンチックですよね。
2015/03/28