さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい
世にも奇妙な見世物のはじまりです、ってね。

本日お見せするのはこちらの女。ただの女じゃあ、ありません。
彼女はなんとあの!世間を震撼させた悪名高きかの人物――火の国は木ノ葉隠れの里出身、名門うちは一族の出でありながら、暁などという犯罪者組織に身を落とし、第四次忍界大戦の引き金を引いた、あの!あの仮面の男の情婦だったと言うではありませんか!

――まあ、まあ、これはこれは。
――なんてこったい!そいつは一度、お目にかかってみたいもんだ!

そうでしょう、そうでしょう。さあさあ御覧なさい。この暗い牢屋に繋がれた、みすぼらしいその姿。
そんなに恐れずとも、どんな悪鬼羅刹も、ここにはいやしません。
ただここにいるのは、男に先立たれ生きる力を失った、哀れで惨めな女です。

さあ、だから笑いなさい!笑ってどうぞ、堂々と!ちらちら遠目に盗み見ることなどありません。呪印に封印術、繋がれ縛られて、満足に呻くこともできない、だからさあ遠慮無く!正面まで来て、じっくりと!近くでよおく、御覧なさいよ。

そして構わずお呼びなさい、“うちはオビト”と彼の名を!
そう、声を潜めることなどないのです。だって私、そのような人物、端から存じ上げませんから。

だからねえ、六代目火影なんていう、仰々しいお方にわざわざご足労いただいても、私はなんにも、できませんの。
犯罪者としてこの里にひっ捕らえられ、随分ご寛大な処遇に預かったことは、確かに感謝しております。
けれどああ、そんなお顔をされても、困るばかりですの。だって私、ここへ来てはじめて、彼の名前を知ったんですから。ええ、ええ、私、なにも知らなかったの!ここが彼の故郷だったということも、あの怖い顔した看守さんがご親切に教えてくださるまで、まったく、これっぽっちも知らなかったの。私なあんにも、知らなかったのよ!

惨めでしょう?哀れでしょう?それでもあの人に付き従った、全てを捧げた、愚かな女なの。
そんな女には、みなさんどうぞ、石でも投げてやってください!
これが極悪犯罪人です!と、晒し者にして、引き回してみたらどうかしら。

そうして里の女の子たちには、ああなっちゃいけませんよ、って教えてあげるの。
その隣にいる男の子には、手を付けたからには最後まで女を面倒みる甲斐性でも、教えてあげなきゃね。

それで戦没者の遺族の前にでも突き出して、醜いものでも見るように、忌々しいものでも見るように、私を詰りなさいよ!

痛めつけて、身も心も!もうなにもかも、感じなくなるくらい!

ねえ、どうか、お願いだから。あの人に置いていかれたことなんて、忘れるくらい。いっそあの人への愛も忘れるくらいに、ねえ、どうか。



2015/05/07

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