※なかなか暴力的な夢主につきご注意ください


寒い。
近頃めっきり寒くなって、私は飛ぶように任務地から帰還した。

さんざん面倒な仕事を押し付けられたおかげで、もう身も心もくたくた。アジトへ帰って真っ先に浴室へと駆け込んで、じっくり温まったあとで、私はそのまま自室のベッドへ直行した。明日の朝も早い予定だったから、さっさと寝て身体を休めたかった。

ロクに照明もつけず勢い良く潜り込んだ布団の中、私はすぐさま眠りへ意識を浚われそうになった。けれども、

(なんだろ……なんだか…やけに…あったか……)

それにも勝る絶対的な違和感に突き動かされ、一瞬の後、ピシリと目蓋を跳ね上げる。

「いや〜んセンパイっ!いきなり布団に飛び込んでくるなんてっ!ダ・イ・タ・ン!」

「なにやってんだトビ」

「ふぎゃッ!ちょっ、ひどいですよぅ先輩!」

なんでこんなことに気付かなかったんだろう。私のベッドの中になぜか、トビが寝ていた。

「せっかくお布団あっためておいてあげたのに…!」

肘鉄を食らわしてやったのにもめげず、トビはオイオイと泣き真似をしながら、背後からぎゅうっと抱きついてきた。

「…あっ、先輩もしかして…お風呂あがりですか!?」

興奮気味に妙な声をあげ、うなじあたりですんすんと鼻を鳴らしたのがほんとに気持ち悪くて、思い切り足を振りかぶって、力の限り踏みつけ蹴り飛ばしてやった。

「イダアッ!先輩っストップ!痛い!」

「やめないわよアンタが離れるまで」

「うぅッ…イヤですようっ、ここまで来てナニもナシに帰るなんて!」

何の話だ、と軽蔑の眼差しで踏み続けてやったら、「あッ…、なんか、気持ち良くなってきた…?」なんて言い始めたトビが心底気持ち悪くて、一心不乱に痛めつけ続けてやったら、「うわ〜んセンパイのバカっ!鬼畜!」とかなんとか抜かしながらようやく退散して行った。

「はあ……」

なんだか余計な疲れが溜まった気がする。私は嘆息してやっと枕に頭を落ち着けた。

その日はあったかい布団のおかげで、それはもうぐっすりと眠れた。こればっかりは確かに、トビの功績かもね、なんて思いながら――。


――翌朝。

早朝の冷え込む空気に身震いしながら、どうにか布団から起き出して、寝惚け眼で着替えに手を付ける。

(ん…なんだかタイツが…みょうに……)

「あったかい…?」

「でしょ!?」

「……、……」

「ンフ!ちゃあんとあっためておきましたよ、ボクが!えっ?どこで温めたのかって?ウフフ…なんなら先輩もあっためてあげぐふぅ」



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信長と秀吉の例のエピソードを思い起こしながら書いてました。あっためてほしいですね。トビくんに。

2015/10/27

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