「昔ね、好きな人がいたんです」

「……何だ、急に。無駄口を叩くとは随分余裕だな」

「もう、そんなこと言わずに。お願いだから、聞いてくださいよ。最後の話だと思って。ね?」

「……、」

「初恋の人でした。同い年の。これがまた落ちこぼれでね、アカデミーではいっつもみんなにからかわれてて…。でもなんででしょうね、私はそんな人に恋をしたんです。毎日毎日、その人のことを見ているだけで幸せだったんです」

「……、お前らしくない、な」

「どういう意味ですか、それ?私にだって純粋に恋するような、そういう時期があったんです。笑ってくれて構いませんよ。でもやっぱりね、私あの頃から意地っ張りで、絶対認めたくなかったんです。友達に言い当てられて、ムキになって否定してたんです」

「……それで」

「ある日ついにね、その人の前で盛大にやらかしちゃったんですよ。私ってばほんとに馬鹿で。『好きなんだろ?』って言われて悔しくて、違うって、あんなヤツ、あんなヤツなんか大っ嫌いだって。……、もう絶対、口もきかないし、私にアイツの話はしないで、って、みんなの前で。大げんかして。それきりだったんですよ。お互い避けるようになって…アカデミーを卒業してからは、別々の班になって、もうほとんど会うこともなくて」

「……」

「でも私、本当に大馬鹿だったから。ずっと後悔してたんです。忘れられなくて。彼のこと。だからいつか……って思ってたらね、その人、死んじゃったんですよ。任務で。あれからずっと…ずっと、伝えたくて。あの人には好きな子がいたんですけどね。でもせめて、嘘だったんだよって。嫌いなんかじゃないんだよって、伝えたくて」

「……何故、そんな話をオレにする?」

「……、さあ、なんででしょうね?最後に、誰かに話しておきたくなったのかもしれません」

「フン……間も無く“計画”は成就する…そうなればお前のその想い人にも会えるだろう」

「そうですね…多分、私はずっと、そのために生きてきたんです。だからもし会えたら、伝えるつもりです。ほんとうは。好きだったんだよって。ずっとずっと。大好きです、って。……ねえ、それまでは。まだ秘密にしておきたいから。誰にも言わないで、くださいね?」

「……ああ」

「フフッ、あなたって、嘘つきだから。心配だなあ。約束ですよ?二人だけの秘密。忘れないでくださいね…お願いだから。ずっと、ずっと。今でも…好きだよ……って、ねえ、トビ?」



2015/11/10

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