ぽりぽりぽりぽり。
甘いチョコレートでコーティングされた、棒状の例のスナック菓子を延々と食べていたら、なぜか呆れたようにオビトさんに睨まれた。

「おい、一体いつまで食っている」

「え?いつまで、って……だって、買いすぎちゃったんだもん」

確かにもう、とっくに11月11日を過ぎてしまった。けれど未だにセール品の棚に並んでいたのを見かけて、私はついつい手を伸ばし買い込んでしまったのだった。

「……オビトさんも、食べる?」

一応そう尋ねてみたら、案の定、「いらん」とだけ素っ気ない返事が返ってきた。

そのまま背を向け、黙々と忍具の手入れ作業をはじめてしまったオビトさんの態度が、なんだか寂しくて。どうせまた呆れられると思いながらも、ダメ元で、声をかけてみた。

「オビトさん」

「…なんだ」

「ポッキーゲーム、したいです」

……しーん。

文字にすればまさに、こんな感じ。部屋の中が一層静まり返って、居たたまれなくなった私は、すぐさま「やっぱりなんでもないです」と言おうとした。ところが、

「いいだろう」

「…え、えっ?」

急に身体を反転させたオビトさんがこちらへ迫ってきて、脇に置いてあった小箱から一本棒菓子を抜き取る。慌てているうちにそれを口へ突っ込まれ、後頭部をホールドされてしまい、一気に顔と顔が近づいた。

「お、おび」

「落とすなよ」

間近でふっと笑ってから、オビトさんが反対の端っこを咥える。
息と息が、触れ合うような。躊躇なく縮まっていく距離に心臓は早鐘を打ち、私は思わずぎゅっと目をつぶった。

「――……、?」

けれどもいつまで待っても、“そのとき”はやって来ない。
さすがにおかしいと思い、恐る恐る、うっすらと目を開けてみれば。

「〜〜っ、」

至近距離にオビトさんの顔があって、く、唇が。
あれ、いやでも、なんで?全く感触がない……とハテナマークが浮かびかけたところで、やっと気がついた。

「……、ぁ……」

すり抜けられたんだ。
目を開き離れていくオビトさんの顔を見つめていると、ニヤリと口の端が釣り上がる。

「……間抜け面」

一瞬なんのことだかうろたえたけれど、すぐに合点がいった。

「…ひっ、ひどい、」

「オビトさんのばか!」と身体を押しのけようとしたら、またもや頭を固定されてしまう。それから急に視界を塞がれ、何事かと戸惑っていると、唇に柔らかな感触が降ってきた。

「……、ん、ふ」

最初はそっと、触れるだけ。回数を重ねるごとに徐々に熱を帯びていく感触にぼうっと身を委ねていると、ようやく唇が解放された。

遅れて目元を覆っていたオビトさんの手のひらが退いていき、見上げれば自然と視線が交わる。少し意地悪な表情で薄く笑われ、急激に羞恥心が込み上げた。

「…な、なんで、こんな、」

「フッ……随分と、物欲しそうな顔をしていた」

「う、っ……」

「ほら、まだまだあるぞ?もう食べないのか?」

なんて、ノリノリで菓子箱を手にとったオビトさんと、逃げようともがく私との攻防は、それからしばらく続いたのだった。


「……それにしても、なんで目隠し?」

「……、さあ、な」


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ちゅーしたいんだけど夢主を見て「自分も普段こんな顔してんのかな…」と思い恥ずかしくなって隠しちゃった系オビトさんでした。

2015/11/15

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