※現パロ、Xmasネタ
今日は待ちに待ったクリスマス・イブ――の、さらにイブ。言い換えればいわゆる天皇誕生日。一足早く恋人とのクリスマスパーティーを計画していた私は、前々から用意していたプレゼントを胸に、喜び勇んでオビトの部屋を訪れた。ところが、そこで私を出迎えたのは、見覚えのある怖い男の人で…!?「なんだお前は…あの時の小娘か」しかもこの人、勝手に人の部屋で出前をとって稲荷寿司を食べはじめちゃうし!?もう一体どうなってるの、どうなっちゃうの、私、絶体絶命のピンチ!!?
「……っていう夢をみたの」
「勘弁してくれ」
オビトはあからさまに顔を顰め、深くため息を吐いた。
「あはは…なんだろうね。マダラさんに会ったのが、ちょうど一年前のことだったからかなあ」
直接会ったのはあの一度きりだったけど、我ながらなかなか衝撃的な出来事だったのかもしれない。それこそ夢に見てしまうくらい。
「にしても、なんで稲荷寿司なんだろね、はは、は……」
変なの、と笑い飛ばそうとしたはずが、オビトが急に真顔になって、こちらをじっと見つめてきたものだから、のみ込むように口をつぐんだ。
「……こんなときにわざわざ、アイツの話をするな。気分が悪くなる」
「ごめん、ごめん」
オビトとマダラさんの関係は、こんな感じにどうやら複雑みたいだから、私はあまり詮索しないことにしている。というか、そっち方面の話題になるとオビトは目に見えて不機嫌になるから、わかりやすいというかなんというか…。
とはいえ実は私は、あのちょっと怖くて迫力あるマダラさんが嫌いではない。むしろ感謝さえしている。
「(だってマダラさんがいなかったら、今のオビトはいないんだもんね)」
そんなこと口にしたらまたオビトの眉間の皺が増えそうだから、自分の心の中に留めておくけれど。
「そんなことより」
いきなりオビトの顔が目の前まで近付いてきて、ニヤッと口角を釣り上げた。
「プレゼントは用意してきたのか?」
「あ、うん」
思わずドキっとしたのも束の間、続いたのはプレゼントの催促の言葉だったから、ちょっと拍子抜けした。確かに、こっちだって最初から渡す気で来たんだし不満はないんだけれど、そこはこう、流れというか、ムードを求める乙女心ってものが――
「違う」
「え?」
鞄からいよいよ例のプレゼントを取り出そうとしたところで、その手をなぜかオビトに止められた。
「……オレが先に欲しいのは……」
手首を掴まれたまま、ゆっくりとオビトとの距離が縮まっていく。
そのまま、そっと目蓋を閉じて。ふたりの間を甘い雰囲気が――
ピンポーン……
「………、」
「…………」
ピンポンピンポンピンポーン
「………あの、オビト」
「……ああ……」
こんなときにどこの誰だろう。ちょっと微妙な空気に包まれながら、私とオビトは顔を見合わせた。
「サンタさんだったらいいのにな」
苦笑いした私を「そんなわけがないだろう」と一蹴しながら、オビトは渋々立ち上がる。いいじゃない、律儀にチャイムを押して、玄関から入ってくるサンタさんがいたって。
……なんて考えながらも、さっきまで話していた話が話だけに、どことなく妙な予感が過ぎったのは、私だけではなかったのかもしれない。
「(まさか、ね……)」
異様に鈍くも見えるオビトの足取りを、部屋から出ていく彼の後ろ姿を静かに見送った。
この突然の訪問者が、「プレゼントを配る白髪の夢の使者」だったのか、はたまた「プレゼントを集る黒髪の夢の使者」だったのかは、神のみぞ――、いや、オビトのみぞ、知る。
END
2015/12/23