気持ちのいい朝だった。心地良い緊張感に包まれながら、私は、玄関に立った。
「それじゃあ、行ってくる」
「はい」
朝日の中、振り向いたオビトさんに、思い切って、ずっとずっと温めてきた言葉をかける。
「あの、いってらっしゃい。……あなた」
どうしても照れが勝ってしまって、なんだか、ぎこちなくなってしまった。
けれど、私、決めてたんだ。私たちが正式に“夫婦”となって、はじめて迎える、この朝に。こうやって彼を、送り出してあげようって。
「……、ああ」
正直、返ってきた反応は予想以上に素っ気なかった。
それでも、彼が微かに頬を緩めたのが見て取れて、ああ、幸せだな、って、私は胸がいっぱいになった。
それから、遠ざかっていくオビトさんの背中を見送って、脳内では早くも明日のことを考え始める。
(明日は…明日は、お見送りの、キス、とか…いやでも、やっぱり、ベタすぎるかな…どうしようかなぁ…)
***
「あのさあ、オビト」
「ん?」
「朝っぱらからその顔は、流石にキツイよ。キモイ」
「ああ?なんだカカシ……フン……僻みか」
「(……新婚気分なのも分かるけど、これは酷いな……)」
「(あー…“あなた”、か…。フ……あの顔……今度は“いってらっしゃい”の…――)」
***
――翌朝。
「オビトさん、……いってらっしゃい」
ちゅっ
「…………、」
「(……ど、どうしよう……オビトさん、固まっちゃった……)」
***
「カカシ」
「なに、オビト」
「オレはお前に分けてやりたい、この幸せを」
「いらないから。その顔どうにかして」
END
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2016/06/24〜2016/08/15
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