「ん…っ、あっ、だめっ、それ以上…奥は…!」
「ほら……逃げるな。大人しくしていろ……」
「ん、ふんうぅ…っ!」

……なんでこんなことになったんだろう。マダラさまの膝の上で、ぎゅっと目を瞑りながら考える。

そもそもは。私は、任務中にポカをやらかして。命からがら逃げだして、なんとか追手をまいたところで、油断していたせいで勢い良く川にぼっちゃーんしちゃって。仕方がないからそのまま泳いで、どうにかアジトまで帰ったんだけど。ロクにシャワーを浴びる暇もなく、リーダーから招集がかかって。それで、全身湿ったまま会合に向かった。…それまでは、よかったんだけど。

……耳が、かゆい。

私の意識の大半をその“痒み”が占拠するまで、さほどの時間はかからなかった。
だから不自然にならない程度に、それとなく耳を気にしつつどうにか集会をやり過ごして、後でひとりになってから思いっきり耳を掻いてやろうと思ってた、なのに。

帰り際にマダラさまに捕まって。

「おい」
「……どうかしましたか?」
「お前……やけに耳を気にしていたようだが……」

ほっといてくれればいいのに、なぜか「なんでそんなに耳を気にしてたのか」と散々問いつめられた。

「かくかくしかじか、というワケでして……」
「フン……貴様は耳掃除もまともにできんのか」

この不潔人間め、とでも言いたげな侮蔑の眼差しを感じたが、これは不可抗力なわけで。私だって普段からそんな汚くしているわけじゃないのに。でもそんな私の不満はよそに、マダラさまはなにを考えたのか、こんなことを宣ったのだ。

「そうだな……それじゃあ、少しそこに横になれ」
「……は?」
「オレがみてやる」
「え……っと?」
「耳掃除してやると言っているのだ」

もちろん断った。全力で辞退した。けれどマダラさまは「このオレが直々にやってやると言っているのだぞ?」とかなんとか妙に食い下がってきて、まあ、このザマよ。


「あ、い、痛いですっ、もっと優しく…!」
「……これならどうだ?」
「う……、はい……」

耳かきしてもらうのってさ、こんな罰ゲームみたいな行為なんだっけ?
私はそう思わずにはいられなかった。だって終始緊張しっぱなしだったし、「有り難く思え」なんて強制されたマダラさまの膝枕は正直硬くてそれほど気持よくなかったしで、本当に心身ともに疲労困憊だった。

「……さて、と。まあ、こんなもんで充分か」
「はあ……やっと……終わったんですね……」

ようやくマダラさまの気が済んだのか、解放のお許しが出たので一瞬、脱力して油断していたら。

「フッ」
「んひゃあっ!」

み、みみ、がぁ…!
いま、今、マダラさまの息がっ、フッて、…んあああ!

「おいおい、変な声を出すなよ」

耳元を抑えてのたうちまわる私へ、マダラさまはとても愉快そうに追い打ちをかける。

「それじゃあ、交代だ。次はオレの番だな」
「……え?」

さすがに空耳かな、って思ったけどたった今マダラさまがご丁寧に掃除してくださったばかりの私の耳が聞き間違うはずもなく。「まさかこのオレにタダで耳かきさせようだなんて思っちゃいないだろうな?」とかいう脅しまがいの言葉が聞こえてくる。

「ほら、早くしろ」

無理やり座らされて、ドカっと膝の上に頭が降ってくる。それからマダラさまはちょっとだけ仮面をずらして、耳を露わにした。

「あ、そういえばこの人普段は耳出してないんだな…ちゃんと聴こえてるのかな…」とか、「膝枕してもらってるって状況なのに相変わらず偉そうだな…」とか、しょうもない現実逃避が次々浮かんでは消えた。

「妙なマネをしたら……分かっているだろうな?」

――ゴクリ。生唾をのんで、覚悟を決めた。




「で、では……失礼しま……」

「――くっ、グゥッ…!」
「あ、ごっ、ごめんなさい!緊張で…手が…震え…っ力んでしまって…!」

「貴様は……オレの耳を壊す気か……?」


END

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急に耳かきしてもらいたいなと閃いたので書いてみました。
良い子のみんなはマネしないでね!約束だよ!耳が壊れるほどの掃除はダメ絶対!

2016/08/31

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