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「ンふっ!」
濡れそぼつそれを捉えて握り込んだだけで、くちゅり、といやらしい水音が立った。
指の腹で鈴口を軽く塞ぎ、漏れ出す先走りの進路を断つ。隙間から溢れたガマン汁は、やがてぐっしょりと右手を透明の液体で包む。
「んっ…ぁふ、ン! んーっんーっ!」
目茶苦茶に私の胸元を叩いて抗議する姿が可愛くて、普段ならそこら辺りに在るネクタイで性器の根元ごと縛るところだが、直ぐに解放してあげた。
ついでに蹂躙していた咥内からも抜け出ると、
「はッ…ぁああ、ンう…っ」
ぼんやりと私を見詰め、真さんはまた緩い射精をした。
透明なものと白いもの、二つの淫液に塗れた手を翳す。照明に照らされ、恥ずかしがり屋な私の主人はすかさず目線を落とした。
「はしたないですね、真さんは。私はまだ、貴方の半分以下の回数しか達していないのですよ?」
「お、お前がっ! …意地悪、するから」
「私の所為だと?」
「う……だって…」
もごもごと弁明する彼の台詞は聞かなかった事にして、私はにっこりと笑ってみせた。
「では、淫乱な真さんのご要望通りに」
「へ…ッひ、ァぁあああッ…!」
パンパンパンパンっ!
ずちゅっぐぷ、ぐちゅぐちゅっ
今日だけは概ね優しかったが、やはり根がSなのは改善しそうもないらしい。
愛撫ですっかり綻び油断していた後孔を無遠慮に貫く。
顔を歪めて髪を振り乱し、その実あんあんと鳴く真さんは本当に可愛らしい。
「ひぁああっ…やめ、あっ、ア! ふぁああああッ!」
「止めて欲しいなんて、まさか言いませんよね?」
「あっ…きょーやァああ…ッ! もっ…そこ、あっ、ほんとにぃッ…ィぁん! あ! あ! イクっイクイク! イクぅううう…――ッ!!」
最後は声もなく背中が反り返り、大分色の薄くなった精液が散る。
今度は堪え切れずに内壁を白く濡らし、顔を上げると、
「……真さん?」
固く眼を閉じた恋人が居た。
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『一週間口を利いてやらないからな!』
朝一番のメール着信を確認してみれば、残酷にもその一言が通知されてしまった。しかし、それもこれも自業自得だ。
早速気落ちするのを感じつつ、のろのろと支度を始める。
まだ日の出前、カーテンの向こうは未だ真っ暗だ。昨晩愛し過ぎた結果気絶させてしまった恋人の姿はベッドに無い。
「……仕方ない」
日中の短い休み時間に外出して、真さんの好きなチーズケーキ持参でご機嫌伺いに出向く事にしよう。それでも駄目なら、ショートケーキとモンブランも追加だ。
最後に甘い言葉を囁けば、許して貰えるだろうか。
自分の口元に触れると、案の定私は笑顔を浮かべていた。
Fin.