※高校生





風邪ひいた。突然だった。熱出たのも頭がふやふやになんのも何もかも、すべて唐突に俺にふりかかった。
やっとの思いでケータイ掴んで鬼道ちゃんにコール。迷惑なやつでごめんね。










「うぇ……う゛……」
原因はよくわかんなかった。不摂生してたわけでもないんだけど。とりあえず鬼道ちゃんに医者ついてってもらって薬もらって帰宅した。まぁ風邪っぽい。しかし気持ち悪い。現在リバースまっただ中。
鬼道ちゃんに背中をとんと叩かれて、ごしごしこすられる。
「き、きど、ちゃ、ごめ、ご、……う゛ぇ゛」
「いいから」
とんとん背中を叩かれ、撫でられ、ああ俺もう高校生なのに。切ない。泣けてくる。ていうかゲロ吐くとさぁ、なんか涙出てこない?
刺激臭がして、きもちわるくて、無限ループ。やな汗もだらだらでぶるぶる震えながらトイレにしがみつく。
吐いてる間中ずーっと鬼道ちゃんは俺の背中を撫でていた。


「ちょっとタオル持ってくるな」
そう言って鬼道ちゃんはトイレから出ていった。さっきまで撫でられていた背中が寂しい。切ない。
もうあらかた胃の中吐き出したみたいで、ちょっとさっきよかマシかもしれない。
ツンと鼻の奥が痛む。涙はまだ止まってなかった。
「明王」
鬼道ちゃんが戻ってきて、しっとり濡れてるタオルで俺の顔を拭きはじめた。
ごめんね。鬼道ちゃん。ゲロの始末なんていやだしょ。






冷えぴた貼ってスポーツドリンクちょっと飲んで、ベッドにダウン。鬼道ちゃんは俺ので汚れたシャツを洗濯機に回していた。
ゴウゴウと音がして、彼が戻ってくる。俺が埋もれるベッドに腰掛ける。
「気分は?」
俺の額から頬にかけてを撫でながら、訊ねてくる。そんなやさしく声をかけられたのは久しぶりだったから、またちょっと涙が出てきた。
そんな俺みて何もいわず撫で続けてくれるなんて、やっぱ、俺にはもったいない。
あ〜ごめんね。ごめんね。
撫でてくれてる手に自分のをそえて、内心何度も謝りながら目をつぶる。
「何か買ってこようか。ゼリーとか」
と、鬼道ちゃんは言った。俺はすばやく「いい」と返した。声がふるえて情けないんだけど。
「ごめん。一緒にいて」
鬼道ちゃんは穏やかに笑った。
「…大丈夫、どこにもいかない」
鬼道ちゃんは察しがいい。何かわかった素振りを見せてずっとそこに腰掛けてくれた。
「すぐよくなる、大丈夫」
なんか、高校に入ったら鬼道ちゃんはすごくやさしくなった。多分別々のとこに入ったから、ちょっとしか会えないからだと思う。
「ん………」
一人暮らしだし、なんだかんだ忙しい。バイトしてまぁまぁ部活して。

凄く嫌だったんだ、一人ってのが。一人を感じてようやく気付いた。

「電気消そうな」
情けないことに顔なんかいろいろぐしゃぐしゃだろう。見せたくない。鬼道ちゃんはまたまた察してくれたのか電気を消してくれた。
「き、鬼道ぢゃ……」
なんか、ため込んでたものが決壊したダムのように溢れてきた。堰を切ったように涙が嗚咽が、有人。
「明王」
ぶるぶる震える手を伸ばしたら抱き止めてくれた。蒲団ごとすっぽり鬼道ちゃんは俺を抱いて、やっと分かった。ずっと俺は鬼道ちゃんに抱き締められたかった。
「辛いか。ごめんな。何もしてやれない」
鬼道ちゃんは俺の耳元でそんなことを言う。俺は謝ってほしくてこんなんなってんじゃねーぞ、ちげーぞ。と思ったが多分分かってくれてるんだ。寂しい。
遅刻魔の俺を叱り付ける担任とか、部活の先輩とか、課題とか、将来とか、親とか。いろんなものが頭をよぎっては消えていく。
胸いっぱい鬼道ちゃんの匂いを吸い込んだら、段々涙も落ち着いてきた。
俺は鬼道ちゃんが好きだ。
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