さわりさわりと風が吹く。
ほんのばかり冷たい風に、真麻は窓の外を見上げた。
僅かに開いた窓からそよぐ風は湿気を含んでいて、外は雨降りだと教えてくれている。
6月と言えば梅雨。だかしかし少しばかり遅い雨の降り出しに、ようやくか、と真麻はにぃと口角を釣り上げた。

「雨、降ったねぇ」

「そうですね!」

心なし嬉しそうなライルの肯定に、同じく嬉しそうに真麻が頷いた。
『すいすい』の特性を持つライルからして見れば、雨は恵みの雨以外の何物でもない。それが小雨であろうが豪雨であろうが、雨であれば自身の力を存分に発揮できる。
ウキウキと冷蔵庫から取り出した紅茶を注ぎながら、ライルは1回くらい雨の緩い時に外に出ようなどと考えていた。時たま真麻の気紛れで雨天候パーティーに組み込まれていたぐらいで、最近はとんと雨の中バトルなど行っていない。
そこまで考えて、ライルから受け取った紅茶を飲みながらにこにこしている主に視線がいく。

「マスターは雨だと何か嬉しいことがあるんですか?」

「んーとねぇ、雨に濡れるのはあんまり好きじゃないけど、雨が葉っぱや枝を叩く音は好き」
にへらっと笑う主に、ライルはきょとんとする。

「音、ですか?」

「うん、音。
ぱたぱたぱたって葉っぱに当たって水が滴ったり、ぽちゃんぽちゃんって水溜まりを作る音が好き」

森深くにある家の周りにはたくさんの草木があり、腐葉土の重なった柔らかい土がある。それらが雨に当たったり土に染み込んだりする音が、真麻は好きだった。
ほんのり甘い、透き通る赤と琥珀を混ぜたような色の紅茶を覗き込んで、真麻は再びへにゃんと笑った。

「だから雨は好きなんだ」

「…私も好きです。
ねぇマスター、またレン達と暴れたいからパーティー組んで欲しいです」

「そのうちね。今は引きこもりたい感じなんだよねー」

くたーっとテーブルに突っ伏す真麻に頷いて、約束ですよ、とライルは繰り返した。
それに了承して、やけに静かな家の中を見回す。

「他のみんなは?」

「やることなくなったから自室でしょう。雨が降っているなら、マスターが外に出ないことなんか百も承知ですからね」

「ちょっと腹立つ」

唇を尖らした真麻にクスリとライルが笑えば、釣られて真麻も笑う。
小さな笑い声が雨音の響く家の中に広がった。

雨音(6月/あとがき)



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -