「ところでオウカちゃん」
「はい」
「柏餅食べる?」
ずいっと差し出された柏餅。そう言えば今は5月だったなと思い出し、オウカは素直に受け取る。
この甘味は無条件に食べられる。
「私ね、桜餅より柏餅派なの」
「…しょっぱいから食べたくないとかですか?」
「そう!柏餅は1から10まで甘いじゃん。桜餅は最初の葉っぱがしょっぱいから苦手なの」
そう言う彼女は少し厚手の柏の葉を取って、口を開ける。パクリとかぶり付いてみよーん、餅を伸ばした。
やけに伸びる餅だなと自分もかじれば、べっとりとした甘い味に目を剥く。
ご機嫌に咀嚼する主を、溜め息と共に振り返った。
「…手作りですか」
「そうだよー」
甘いものはこれでもかと甘くする主義の、主お手製の柏餅。そこかしこから甘ぇ!と悲鳴が上がっているところを見ると、既に配り終えていたらしい。
多分また大量に作ったのだろうことを考えると、頭が痛くなってくる。
「…次は少し甘さを控えて下さい」
「善処するー」
2つ目を口に運ぶ主を横目に、オウカは柏餅をかじった。