混ざる血の色は何色か


※2018.10月拍手文『血液は混ざらない』のおまけ


すっかり涼しくなって夏の暑さも忘れてしまうほど冷たい風の吹くシンオウ地方。
少しでも暖を取ろうと自身に身を寄せる少女に困り果てて、オウカは部屋をぐるりと見回す。
オウカと真麻が寝転ぶ広い天蓋付きのベッド、垂れた薄布越しにパソコンとノートやペンで散らかったデスクが見え、大きなクローゼットの扉も開いたまま隙間から白いコートが覗いていた。
あとは壁に写真が数枚貼られただけの女性の部屋らしくない殺風景な部屋。それを確認するだけ確認して、自分の首に巻き付いている己の主人へと目を向けた。
本日はハロウィン、収穫祭の日。彼女に飾り立てられたオウカは吸血鬼に扮し、彼女も同じく吸血鬼に扮していた。

「…主人?」

頬に当たる温かい白い肌。さらさらとした黒髪が頬を撫でる。オウカの呼び声に反応してのろのろと顔を上げた真麻は、眠そうな不安そうな、いつもより暗い紫の瞳をオウカに向けた。
そしてオウカの首元に手を伸ばす。

「ん…」

細いリボンを解いて引き抜いて、それを後ろも見ずに放る。プチプチと丁寧にシャツのボタンを外して、露になった男性らしく太く筋の浮いた首を細い指先でなぞる。

「…ん…ここが静脈、かな…?」

小さな掠れ声が赤い唇から漏れる。その唇の隙間からちらちらと覗く鋭い歯に意識がいく。真麻はその視線に気が付いて、見せ付けるように唇を引き上げた。

「うふふ…オウカちゃんは喉を咬み切られたい欲望でもあるのかな?」

「貴女は…咬み切りたい欲でも?」

「別にぃ、でもオウカちゃんは特別かなぁ」

温かい息が首に触れ、小さい手に頭を引き寄せられる。首筋に沿って赤い唇が押し当てられ、オウカは固まる。抵抗しようか迷う間もなく唇が離れ、直後に小さな刺さるような痛みが走った。

「…主人、何、を」

「…っぷは」

ずるり、と肌から細いものが抜けるような感覚。顔を上げてオウカに馬乗りになった真麻の口元には一筋の赤い線。彼女が恍惚と口角を引き上げれば赤い歯が2対。
その歯をベロリと負けないくらい赤い舌がなぞる。

「ん、ん…まずい」

「それは…そうでしょう…」

「でもオウカちゃんのだし…」

オウカはじくじくと痛みを訴える首筋を無視して、その赤い口元に目を奪われる。
鋭い歯にも、赤い舌にも、自分の血液に濡れる唇にも。
…目の前の彼女とは違ってどこもかしこも成長してしまったオウカには毒だ。
触れるなと警告を出す脳味噌なんて眼中になく、その赤い唇を指先で拭う。拭った指先に付着した赤を認めた真麻が舌を伸ばしたのに抵抗せず大人しく舌が這うままにさせる。それでも足りないと再度口を開いた主が首にかぶり付いても止めもしない。
好き勝手咬み付かせ体液を啜らせて。自分の僕の首や鎖骨周辺にいくつもの咬み跡と鬱血痕を作ってようやく満足したのか、真麻はオウカの上で蹲るように体を丸めて眠りに着いた。
白いシーツに散る赤、真麻のシャツにも数滴零れている。それを指先でなぞってそのまま服越しに真麻の首筋に触れた。

「…貴女の首を咬み切りたい、なんて、思っていたら…どうするつもりでしたか」

ボソリと呟いたほの暗い声は、眠る主に届かない。








------------------------------











×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -