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秋もどこへやら行ってしまった、冬の入り口。
大きな屋敷の庭をぱたぱたと駆ける少女が1人。手にはどんぐりやら紅葉やらを持って、縁側に座る緑髪の少年へ手渡す。

「サクヤくん、これあげる!」

「お前よく集めたな。何持ってきたんだ?」

長髪を掻き上げ、サクヤは少女を抱き上げる。膝上に座らせ、持ってきたどんぐりや紅葉を並べた。

「どんぐりがある庭ってなんだよ。ナイトん家、本当に広いよな」

「どんぐりたくさんあるよ。サクヤくん家は?」

「俺ん家庭は広いけど、さすがにどんぐりはないな」

サクヤは、どんぐりを立たせて並べる少女の頭を撫でる。その後ろの襖が開いて、年かさの少女が顔を覗かせた。首を傾げて2人を見やる。

「リーダー、どうしました?」

「レンちゃん、どんぐり見つけた!」

「あらら。虫が出るから、ちゃんと調べてから触って下さい」

少し砕けた敬語で喋る少女は、サクヤからナイトを受け取る。立つととても高身長の彼女は、そのまま襖の中へと引っ込む。サクヤは溜め息を吐いて、2人のあとを追った。
部屋の中は広く、中では年長組が寛いでいた。そこにナイトの高い声が混ざり、一気に楽しげな雰囲気へと変わる。
緑茶を淹れた女性が、ナイトの前に湯飲みを置く。熱いから気を付けるように、と言って、茶菓子を渡した。
ナイトは満開の笑顔を向ける。

「アローラちゃん、ありがとう!」

「アローラさん、俺にも下さい」

「レンは自分で取れるでしょう?ほら、サクヤも食べますか?」

「俺は取れない扱いなんだな」

口では文句を言うものの、手は素直に受け取り、早速袋を開ける。中から出てきた最中に満足そうに頷いて、かじりついた。
ナイトもうまうまと食べている。
レンは溜め息を吐きながら自分で茶菓子を取り、袋を開けた。

「サクヤさんとは3つしか離れていないのにこの扱い」

「レンには身長があるでしょう。腕も比例して長いですし」

「悪かったな、小さくて」

「サクヤくんはご主人様と同じくらいだよね?」

「あれと一緒にすんな」

あれより大きいわ、鼻を鳴らしたサクヤにナイトはごめんね、と謝る。それにレンは再び溜め息を吐いた。

「幼子に謝らせるのはどうかと思いますけど」

「人に傷付くこと言って謝らないのはどうなんだ」

「それは勝手に傷付いてるサクヤさんが悪い訳で」

「あんだと?」

「そこ、喧嘩はやめろ。放り出すぞ」

煙草を吹かしながら目付きの鋭い男が低い声で止める。途端にぴたりと止めた2人に溜め息を吐いて、深く煙を吸い込む。
灰皿を押しやって、銀髪の女性が眉間にしわを寄せて男を見やった。

「ディオスさん、リーダーがいるのに、煙草はやめて下さい」

「こんくらいでナイトがどうなる訳でもないだろう?なあ?」

自分よりずっと小さな少女に同意を求める男―ディオスは、それでも首を振る女性に根負けしたように灰皿に煙草を押し付けた。火が消えてすぐ、女性は灰皿をディオスから遠くに押しやる。

「クサビちゃん」

「リーダー、煙草の煙は吸ってはダメですよ」

「むぅ、わかってるもん!」

少々むくれたようにする少女に、自分達の主の影を見て、はあ、溜め息が溢れる。
見た目も若干似ているし、あんな感じに育ったら嫌だなぁ、と皆は思った。
ところで。

「真麻どこ行ったんだ?」

「一軍ごともぬけの殻だったな」

「トキワの家にいないならこの地方にいないと考えていいでしょう」

ふむ、アローラの言葉を受けて、レンはライルの顔を思い浮かべる。あの先輩はこの地方にいないなら、シンオウに戻ったのだろうか。シンオウなら主の故郷でもあるのだから。

「ご主人様、ナイト達のこと置いてっちゃったの?」

「6体しか持ち運べないことを考えると、置いて行かれたようですね。まあ彼女にしてみれば、一軍の方が何かと便利なのでしょう」

「つかメールとかすればその内捕まる気がするけどな。真麻のことだから携帯も持って歩いてるだろうし」

そう言ってサクヤは携帯を取り出す。ワンプッシュで電話をかけ、数秒。苦い顔をして携帯をしまう少年に、クサビは首を傾げる。

「どうしました?」

「…切られた。しかも今度は繋がらねぇ」

「あら。マスター嫌がらせですか?」

少しばかり嬉しそうにレンは言う。ナイトは電話に出てくれない主に機嫌を損ねて膨れている。
サクヤも同様だ。

「なんだよ」

「まあマスターはオウカさんといるから、こっちまで気が回らないだけでしょうから」

「どうせいちゃついてるんだろ。ほらナイト、膨れるんじゃない、俺が遊んでやるから」

ディオスに抱き上げられてナイトはぎゅうとその首に抱き付く。ぽんぽん、背中を叩いて庭で何をしていたのかを聞く。
ナイトは途端に顔を輝かせてあのね、と話始めた。

「…まあ、ナイトが無事なら今はいいや」

「リーダーいなくなったら大変ですもんねぇ」

「あ、サクヤさん、お茶菓子まだありますよ」

「おっ、ありがと」

もぐもぐと2つ目を口に入れるサクヤに笑って、皆がナイトの話に耳を傾けた。









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