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「…はぁ?」

結真は首を傾げる。目の前に立つのは自分が姉と慕う従姉のパートナーである。
2m近い身長、身長の割にしゅっとした身体。若葉色の長い髪に若葉の瞳。尖った角は磨き上げられている。
種族はドダイトス、名をオウカと言う。
結真は真麻を振り返る。

「姉さん、あのジュカインは?」

「今相棒見つけてコンビで仕事してる」

「…相棒?」

「フシギバナの女の子」

あ。そう。
結真は再びオウカに向き直る。それから柔らかく微笑んだ。

「僕は結真、姉さんの従弟です。オウカ…さん、よろしくお願いします」

片手を差し出せばオウカは少しばかり目を見開いて、それから手袋から手を出して結真の手を掴む。よろしくお願いします、小声だがそう言った。

「やだー、結真くんオウカちゃんと仲良しなの?」

「姉さん茶化さないで」

「私はこの子達といちゃいちゃするのに忙しいんだよねー」

「ねー!」

ふわっと真麻の腰に引っ付いていた少女が浮く。ピンクの髪を2つに結い上げ、露出の多い服装。
少女は真麻の隣にちょこんと座った。

「マスターったら、久しぶりなのにぃ、結真くん結真くんってぇ」


「なぁに、その甘ったるい喋り方。いつからギャルになったのかな?」

「可愛い?」

「可愛いけど。いつもの喋りの方が絶対可愛いよ」

「きゃははははっ、アタシもそう思うー!マスター大好きー!」

ぎゅむーっ、少女は真麻に抱き付く。その騒がしい様子に結真は嘆息した。

「メイ、メイラク、もう少し静かに」

「はぁい!」

注意されても元気良く手を上げる姿に結真は頭を抱えた。その背後でオウカも眉を寄せる。
それに気が付いたメイラクはクスクス、口に手を当てて笑った。

「オウカちゃん変わんないねー」

「でしょー?」

「きゃははははっ!ほんとあんまり眉毛、寄せてると早くお爺さんになっちゃうよー?」

「…メイラク、黙れ」

オウカの低い声。それにぴたり、メイラクは動きを止めた。途端に顔を歪めて、長い爪を見せるように指を伸ばした。

「アタシに命令しないでよ。アタシにしていいのはマスターと結真くんだけ。あんたがどんだけ偉くても無理」

「喧嘩はやめい。オウカちゃんはボール戻って、メイちゃんはもう寝なさい」

「…はぁい」

真麻に言われメイラクは不満そうだが頷いた。同じようにオウカも頷く。ふよふよとリビングをいくメイラクを確認して、オウカは主の投げたボールに当たる。赤い光に包まれてオウカは消え、ボールは真麻の手の中へと戻った。
固い表情を自分に向ける結真に隣に座るように言って、真麻は柔らかく笑った。

「…久しぶりぃ」

甘えたような声で真麻は結真に言う。久しぶり、結真はまだ固い声だが答え、タイミングよく運ばれてきたカフェオレに口を付ける。キッチンへと帰っていくライルを示して、あの人も新しい仲間?と聞いた。
それに真麻は首を振る。

「昔からのメンバー」

「…こっちに来た時は違ったよね?」

「ころころ変えてる。あの子達はホウエンのメンバー。今いる子達は昔からのメンバーとあと諸々…」

くわり。欠伸をして真麻は瞬く。
既に0時を越えている。
ん〜と生返事の真麻に結真は風呂を勧め、布団を整えにいく。手伝います、とライルも付いてきた。真麻はそれを見送ってのろのろとバッグから服を出していた。

「わぁ」

真麻専用になっている、いや、なってしまった部屋の扉を開くと、中は広くログハウス風の内装に似合わない巨大な天蓋付きのベッド。パソコンの置かれた広めの机には乱雑にノートやスケッチブックが置かれており、『さわるなキレる』と書かれた紙がピラリと貼られていた。

「マスターらしい部屋ですね」

「少し埃被っちゃってるけど大丈夫かな…ベッドは大丈夫だけど」

「大丈夫じゃないでしょうか。マスターは寝られれば大丈夫精神ですから」

「そっか」

姉さん丈夫だね、と真麻に比べて貧弱そうな少年は言う。
そう言えば彼も誉れあるホウエンチャンピオンだったな、とライルは思い出す。あまり似ていないと思いながらも引きこもりなところはそっくりだ。
軽くはたいて埃を払い、クイックルワイパーをかけて綺麗にする。これでどうにか使える部屋になっただろう。
部屋を出てリビングに戻ると、ソファの上に物が散乱していた。真麻はまだ風呂の中のようだ。その散乱した物を片付けて一纏めにし、改めて結真はライルに笑いかけた。

「初めまして。姉さんの従弟の結真です」

「あ、はい。お話は伺ってます。ライルと言います、マスターとはもう6年になりますか」

「…6年?」

はて、6年前はちょうど真麻がシンオウを回っていた時ではないか?その時から一緒なら昔からのメンバー、と言う真麻の言葉も頷ける。
まだ少女の面影を残した目の前の女性は、よろしくお願いします、と結んだ。

「お風呂出たよ〜」

そこにタンクトップに短パンと涼しそうな格好で真麻はやってきた。髪を拭きながらバッグとそこから溢れた物をライルに持ってもらい、じゃあおやすみ、と部屋へと引き上げていった。
しばしポカン、と見ていたがもう1時、寝る時間だった。

「姉さん、相変わらず自由人だ」

ぽりぽり、頭を掻いた結真はリビングの電気を消して部屋へと向かう。
ようやく、家の中が静かになった。











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