ナンセンス
「案外仁王君ってアンタのこと好きだったりして」
「ないない。」
「わっかんないよー?人の好みって色々だから」
「ちょっとそれどういう意味かな?」
「やぁだ深い意味なんてないって!」
からかうように友達が言った。
にやにやと笑いながら私の肩を叩く。
仁王が、私を好き?
私の事を好きだから一緒にテスト勉強をして、こうして荷物を持ってくれたのだろうか。
違う。私はそれを断言することができる。
「でもさ、ホントに。だって最近アンタと仁王君って良く一緒に居るじゃん。仲も良さそうだし。」
周りからはそう見えているのだろうか。
確かに私と仁王は一緒に居ることが多いのかもしれない。ただそれは仁王と柳生と私の三人で居ることが多いからだ。柳生と私で居ることも、仁王と私で居ることも考えてみればほとんどない。
「ほんとにそんなの有り得ないから。」
ええーでもーと食い下がってこようとする友人を追い立てて教室を出た。
帰りにミスドでも寄ろうかと提案すれば、なにを食べようかなぁと悩みはじめる。テストはどうだった?と聞けば、完全に先程の話題には興味を無くしたのだろう、それが―とついさっき終わったばかりのテストについて話し始めた。
全然できなかったーとかそこは分かったとか言いながらミスドに向かう途中、私は仁王の事を考えていた。
私と仁王はよく似ていた。とてもよく。だから仁王の優しさが私への好意からくるものではないということも分かるし、仁王がなぜそうしているのかも分かってしまった。
仁王は私と柳生を二人きりにさせないようにしている。
仁王が好きなのは、私ではなく
柳生なのだから。
[*前] | [次#]