きっとみんな深爪




「どしたの?元気ないじゃん。」


私の隣に座るオレンジ色の髪の毛の男が言った。机に頬杖をついて、自分から聞いてきたくせに、あまり興味は無さそうだった。


「爪きり失敗した。」

「深爪?ダサいね。」


私の指を覗き込みながら、馬鹿にしたように佐助が笑う。
コイツは人が不快になるポイントを的確におさえている気がする。その表情ひとつでさえ、不快だ。言わないけど。
彼には、私が不快になろうがならまいが関係はないのだから。

友達、もしくはただのクラスメイト。それだけ。普通に話はするけれど、佐助にしてみれば私はいてもいなくても変わらない存在なんだと思う。細いつながりだ。クラスが離れたら、もしかしたら席が離れただけで話をする事もなくなるかもしれない。
去年のクラスメートの名前を私は全員思い出せなかった。


五時間目の本鈴が鳴って、私と佐助は前に向き直った。
教室の前のドアを上杉先生が開けた。
かすがが相変わらず熱い視線を送る。そんな彼女を佐助は見ていた。柔らかいような、切ない笑みだった。不快だった。
ぐっと堪えるように私は右手を握りしめる。ずきずきと深爪した指先が痛んだ。脈打つ心臓に呼応していた。いっそ切り落としてしまいたい。





きっとみんな深爪



090827




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