背、伸びたね




夏の暑さはもちろんのこと、焼けた鉄板から発せられる熱が尋常じゃない。首からかけたタオルで額の汗を拭いながら私はふうと息を吐き出した。隣の政宗を見れば、彼は頭にタオルを巻いて一心に焼きそばを焼いていた。


「おい、サボんな。」


私の手が止まっていることに気が付いた政宗が私の頭をはたく。ごめんごめんと謝りながら私も焼きそばに向き直った。



年に一度開かれる小さな夏祭り。五分とかからずに一回りできてしまう広場の中央には手作りの櫓がくまれ、それを囲むようにいくつかの屋台が並ぶ。小さな小さなお祭りだ。


「ったくなんで俺達がこんな事。」

「はい文句言わない。」


私だって好き好んでこんな暑い日に熱い鉄板に向かいたくなんて無い。町内会のお手伝いとしてかり出されなければ、今頃アイスでも食べてくつろいでいたに違いない。


「昔は自分達が遊んでたんだから。」


そう言えば政宗はしょうがねぇなと呟いた。その口元が上がっているのを私は見落としたりなんかしない。


「まあいいか。久しぶりの夏祭りってのも。」




昔はこの小さな祭りを毎年楽しみにしていたものだ。私も、政宗も。
金魚すくいもヨーヨー釣りもやった。浴衣だって着た。楽しそうに笑う子供たちはかつての私達だ。


笑いあう私達の前を、ピンク色の浴衣の裾を翻しながら一人の女の子が走る。
そんなに走ったら転ぶぞー。
私がそう思ったのとほぼ同時、彼女の体が沈んだ。思わず苦笑いが漏れる。


助け起こしに行ってあげようかと焼きそばを焼く手をとめたが、どうやらその必要は無かったようだ。
座り込む彼女の手を、一人の少年が引っ張り上げた。彼が軽く砂をはたいてやれば、さっきまで泣き出してしまうのではないかと心配された彼女の姿は何処にもなく、すぐに二人手を繋いで何処かに走り去ってしまった。


そう、かつての私達なのだ。






090708




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -