短編 | ナノ


▼ 夜になるまで待って

今すぐ会いにいきたい。
あなたの声が聞きたい。そのちょっとイジワルな声が。
ねえ、そんな気持ち、あなたも感じてる……?



今週は何故か魔法薬学の授業がない。
嘘!一週間も教授に会えないなんて、悲しすぎる……。遠くからでもいいから教授をひと目見れるだけで、それだけでもいいのに。

食事の時見れるからいいでしょって?
だって、教授と必ず会えるとは限らないもん。凄い数なんだよ?生徒の数……。食事の席は限られてるんだから、食べたらすぐに出ないといけないし。
そんな中食事もせずに座って教授をじーっと見つめてたら、変人扱いされちゃう。それにばれてしまうかもしれない。

こっそり会いに行けばいいって?
うーん、それもねぇ…。最近食事をすっぽかすことが何回かあって、パーシーにちょっとしたお小言も貰ってしまったのだ。
ちょっとやばいでしょ?これ以上まずい行動をして彼に目をつけられたら大変だもん。だから夜の逢引き(?)も控えてるのだ。

会えない時間が愛を育むって言うの?
そうは言っても、切ないよ……。
あ〜あ。去年はそういうことってなかったよね?だってお互いの気持ちが通じ合うまではこんなに会いたい、大好きって思いは強くなかったもん。
これって教授にかなりのめり込んでるってことではないでしょうか……。
たとえ両思いになったとしても、幸せな毎日が送れるわけじゃないんだね。恋をするっていうことは、こんなにも不安になったり、ときめいたり、切なくなったりするんだね。

私はスープを掻き混ぜながら切ない溜め息をついた。教授に会えなくて食欲がないなんて、本当に私ったら完璧に嵌ってるよね…恋の病に。
ロンが不思議そうに聞いてくる。

「レイ、どうしたのさ?そんな溜め息ついて…なんかあったのか?」

あ、聞こえてた?私はロンを見つめて言った。

「ごめんごめん…つい、切なくなっちゃってさ…」

私がそう言うとロンは目を丸くさせていた。なにさー。

「レイ、切ないって……お腹減ってるの?」

ロンのその言葉に私は思わずずっこけそうになった。腹が減ってるって……んなわけあるかい!どこの食いしん坊なんだよ!

「あのねー、んなわけあるかっての!もう…切なくなるといえば、一つしかないでしょうが。わかんないの?君ってばこ・ど・もなんだから…」

私はそう言うとロンの耳にフッと息を吹きかけた。
とたんに周りで黄色い声が上がる。ん、何…?

気が付くと大勢の女子生徒がこちらを見て目を輝かせていた。え?何これ、いつの間に。
私は驚いてしまった。ロンは顔を赤くしている。はは、ロンったら可愛いな。
ハーマイオニーは深い溜め息をついていた。

「レイったら、気が付いてなかったのね…。あなたがそんな憂い顔で食事をしているものだから…さっきから凄い注目を浴びていたのよ?それなのにあなたのさっきの態度ったら…完全に誤解されたわね…」

ハーマイオニーは呆れた、って顔で首を振ってるよ。
え?誤解ってそれって……ロンと私がぁ?

「いやあのそんな誤解あり得ないってば。だってロンだよ?男だぜ…?友達なんだよ?」

私が驚きでそう言うと、ハーマイオニーは額に手をあてて深―いためいきをついてきた。

「あなたって本当に自覚がないのね…もし恋人がいてこんな所を見たら絶対に許さないと思うわよ?」

と言ってきた。
ははは…教授がもし見ていたらそれこそどっかに閉じ込められて、いいだけ攻められそうだ。
ってそういえばここって大広間だった…!
私は慌てて教授席を見たが……そこには他の教授はいたけどスネイプ教授はいなかった。
はぁ、良かったよ……。私は溜め息をついた。危なかった〜。
ロンは真っ赤な顔をして下を向いて食事をしていた。

ごめんねロン、そんなつもりはなかったんだよ……。ハリーはおかわりをしに行っていたのでこの光景を見てはいなかった。


それが全然良くなかったって知るのは、もう少し後の事になるのでした……。
もー私のバカー!!




*****




食事を終えて午後の授業まで図書室で時間をつぶそうとしていた私達は、他愛ないおしゃべりをしながら廊下を歩いていた。
すると向かいから教授がやってくるではないですか…!
やーん教授じゃん!嬉しい〜教授に会えた!私の心は教授をひと目見ると喜びに震えた。

教授がどんどん近づいてくる……あれ……なんか……不機嫌なような気がするのですが……っていうか…ものっそい不機嫌なんですが……なんで?

眉間にものっそいシワを刻んだ教授が私達の前に立ちはだかってきた。ハリー、また何かやったの?私は思わずハリーを見つめた……ハリーは慌てて首を振ってきた…え?何もしてないって?

「Mr,カンザキ……話がある。ちょっと来て貰おうか……」

ええ?私なの?
教授は唸るようにそう言うと、私が返事をする前に私の腕を掴み、ずんずん進んでしまう。
呆気にとられる皆。いや、私も驚いてるから。何で…?
私は教授に引きずられながら皆に言った。

「皆、後でね?心配しないで…」

教授に引きずられるように歩きながら、私は教授に声をかけた。

「一体どうしたんです?何かありました?」

私が教授を見上げると、教授ったら凄い目で睨んできた。うわ〜怖いよぉ。
うん、何をしたにせよ、これ以上刺激しない方がいいだろう、今は。
私は教授へ話しかけるのをやめた。

どこをどう歩いてきたのか。教授はある部屋の前で立ち止まると杖を振ってドアを開けた。そして私をその部屋へ放り込む。乱暴だなぁ、何でこんなに怒ってるの…?
教授は後ろ手でドアを閉めると杖を振って呪文を唱えてしまった。


ひょっとして閉じ込められた……?

教授、すっごい睨んでるし。

「レイ、どういうつもりだ?」

教授、声が物凄い怒ってる…。でも、何で怒ってるのか私にはよく分からないんですけど。

「どういうつもりって……何のこと…?」

「ほぉ……しらを切るというのかね。先程の騒ぎを、我輩が見ていなかったとでも?」

教授の声に静かな怒りを感じるのですが……先ほどの騒ぎって…もしやアレのこと?だってあの時教授はいなかったはず…。

「先程の騒ぎって…だってあの時セブルスってばいなかったはずでしょ…」

私がそう言うと教授は、

「残念ながらおりましてな、一部始終を見せてもらった……お前があんな浮気性だとは、思わなかったが…」

ととんでもないことを言ってきた。ええ!見られてたの!それは仕方ないとしても、何それ!浮気性って私の事?

「浮気性って何ですかそれ?たしかにあれは悪ふざけだったかもしれないけど、ロンは僕の友達だよ?浮気なんてしてないって…」

私は必死になって弁解するんだけど……教授ってば聞いてねーよ!何やらぶつぶつと妖しげな言葉をつぶやいている。

「やはりアレでは足りなかったのか……もっと…我輩のものであるということを解らせねば……」

何言ってるの…!なんちゅう危険な台詞なんだ!私は思わず後ずさった。
教授が私に向かって微笑んできた…妖しげな微笑みだった。

ここってば密室状態。ドアには鍵がかかっているみたい…だし…。

ってことはこれから起こることって一つしかないのかしら。胸がどきどきしてきた。
やばいよ!何とか回避しないとっ!

「…あ…の…セブルス……次の授業があるから…お話は手短にお願いします…ね…?

私が恐る恐るそう言うと、教授はニヤリと笑って、

「そうだな……お話はもう止めだ。ここからは授業に入りますぞ…」

恐ろしい台詞を吐いて来た。それってそれって…マジでやばいんではないですか…?

「いやそうじゃなくって、次の授業は『変身術』だからそれに遅れちゃうってば…」

私がそういいながら壁際まで後ずさると教授はあっという間に距離を詰めて来た。私の顎を捉えると、

「そのような授業、出なくとも良い。我輩がもっとためになる授業をしてやろう……レイ、お前には拒否権はない」

教授は甘く私に囁くと、反論しようとして開いた私の口をキスで塞いできた。

「んんんっ……だめ…だってば………んんっ……」

何とか逃れようとするんだけど、教授ったら身体をしっかりと拘束してしまって身動きが取れない。おまけに頭までがっちりと押さえつけてるもんだから教授のいいようにキスされてしまった。

ああ……教授のキス…久し振りかも……。
私ってば攻められてるのにすっごく感じてしまった。こんなことされても…教授…あなたがだいすき……。
私はいつの間にか教授のキスに応えてしまっていた。私のバカ…いくら久し振りだからって、これじゃあ教授の思う壺じゃんか。

長い長いキスが終わると、教授はじっと私を見つめてきた。
教授…目つきが尋常ではないです。なんか、怖いかも…。
それになんだか胸元がすーすーするんですけど……そう思って自分の胸元を見ると……すでにボタンがが外されはだけていました。

凄い早業だよ!いつの間に……!

まずいよ、このままいったらあの時の授業のようにエッチなこといっぱいされちゃう…!(作者注:短編“レッスン…”を参照)それにホントの授業に出られなくなっちゃうよ!
何とか、何とかせねばっ!私は説得を試みた。

「セブルス……誤解だよ…?僕には…セブルスだけ…あなただけなんだから……。だからそんなレッスンは必要ないよ。だって僕は……セブルスの…ものだから……」

ね?そう言って教授の唇にキスをした。

「誤解させたんだね、ごめんなさい…。どうしたら許してくれるの?」

私は教授の耳元で囁いた。どうか、どうかうまくいきますように……。
とたんに凍りつく教授。あ…もしかしてこれって禁句、だったの…?

教授は無言で杖を振ってきた。するとどこからともなくベッドが現れる。
教授は私を抱き上げると微笑みながら、

「レイ…そう言ってくれるとは…我輩は嬉しいぞ。今日はお前を離しませんぞ…ココで朝までお前を可愛がってやろう……」

と恐ろしい台詞を言ってきた。
違う!違うって!そうじゃないってば〜!昼間っからなに盛ってんだ、教授ってば〜!!
私はショックで思考回路がストップしてしまった。
その隙を逃す教授じゃない。私の首筋に舌を這わせてくる……ああ…そんなことしちゃ…だめ…。
この部屋には窓がある。教授の部屋と違って誰かに見られるかもしれないのに……。

「ああっ!……セブルス…だめぇ…せめて夜になる…まで…待って…んんっ!…ねえ…待ってよ……はぁん…」

何とか話をしようとするんだけど、教授の愛撫が激しくって言葉にならないよ。
教授はついばむようなキスをしながら、

「だめだ……夜まで待てない……。レイ…我輩は、今すぐ欲しいのだ…お前が……」

そんな腰にくるような台詞を言ってくるのだ。すっごいセクシーな声で。
そして教授ってば私の顔を見るとニヤリと笑って、

「それにレイ…お前だとてこんなになっておる…。お前こそ、夜まで待てるのかね?」

そう言って私の敏感になっている場所に手を這わせてキスをしてきた。

「ああんっ!……だって…だって…あなたが……そうするから…」

私はシーツを掴んで快感に震えた。
そんなことされたら……もう…だ…め……。

私は心の衝動のままに、教授の服のボタンを外しだした……あ、教授ってばちょっと驚いてるよ。

「もお……教授のエッチ……僕だって、おかしくなっちゃうでしょ……覚悟してよね」

私はそう言うと、教授の首筋にキスをした。



私だって、教授にレッスンしちゃうんだから。
私が教授のものなら、教授だって私のものなんだからね?


夜まで待てない私達の、熱い熱いひとときが始まった。
あとはお互いが燃え上がり、燃え尽きるその時まで、この愛の時は終わらない…。

ああ、教授、こんなことしちゃうくらい、あなたがだいすきよ……。


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