短編 | ナノ


▼ あなたに逢えない日は…




今日は日曜日。だから授業はお休みの日だ。

皆は思い思いの休日を楽しく過ごしているみたい。
ハリーはせっかくのお休みなのにクィデッチの練習。まあ、好きだからやってるんだろうけど。
ロンは同室の子とチェスに夢中だ。私も誘われたんだけど今日はあんまり気分が乗らなくて遠慮したのだった。
ハーマイオニーは女の子の友達となにやらお部屋で秘密の集まりがあるらしい。いいな、パジャマパーティーみたいなもんかな?私も元の世界では由香里とよくやったっけ。今は男の子だから当然誘われるわけはないけどね。

教授には昨日会いに行っちゃったし。本当は今日だって会いに行きたい。
でも毎日会いに行くのはしつこいと思われるかもしれない。教授の負担になっちゃうのは嫌だもんね?
だから午前中はいつもの通り鍛錬をして、呪文練習をして、午後からは宿題をやっているのです。寮の部屋でね。
でも私ってばちっとも勉強に集中できない。



ああ、教授に会いたいな。
昨日会ったばっかりなのにもう会いたいなんて、私ってば本当に完璧に嵌ってる。
私はちっとも集中できないので教科書を見ることを止め、窓から外の景色を眺めた。もう夕方になるんだ。
談話室で淹れてきた紅茶をゴクリと飲む。
ああ、こんなんじゃない。私が飲みたい紅茶は…。
私ってばいつの間にこんなに贅沢になったんだろう。



教授が淹れてくれた紅茶が飲みたい。
教授のちょっとイジワルな声が聞きたい。そして私に愛を囁いてほしい。私の心がときめいて、恥ずかしくて堪らない気持ちになるくらい…。

その瞳で私を見つめて欲しい。私だけを、見つめて。他の誰も見ないで。
そうして教授の広い胸に顔をうずめたい。思い切り抱きしめたい。
教授のちょっと皮肉げに笑う口元が見たい。そしてその唇に私からキスをするのだ。
そうしたらあなたはきっとちょっと驚いて、ニヤリと笑うと私にキスをし返してくるはず。私はとってもうっとりして、きっと私の心と身体は舞い上がってしまう。
そうしていつまでも私を抱きしめてくれるのだ。その力強い腕で…。


私は切ない溜め息をついた。
こんな妄想をしちゃうほどあなたが好き……。
ああ、セブルス、あなたに会いたいよ……。




*****




今日は日曜日だ。よって授業はお休みだ。

今日はまるまる1日何の仕事も入っていない。こんなことは珍しいことだ。
いつもであれば薬の調合を依頼されていることが多いので、何らかの薬を調合、研究していることが多いのだが…。
こんな日もあるものだな。何もしない日があっても良いだろう。
我輩はそう考えてかねてから読み進めようと考えていた専門書を本棚から持ってくる。ソファーに座って本を読み出したが…どうにも集中できぬ。何かが足りぬのだ。

何だ……?

紅茶は淹れてある。
足りないものは無いはずだ。それなのにこの物足りない感じは一体…。
我輩の休日としては完璧なシチュエーションであるはず。誰にも邪魔されず、仕事も入っていない。好きなことに使える時間がたっぷりとある。
ああ、それなのにこの気持ちは……?
そこまで考えて我輩は突然理解した。
成程、欠けているものを見つけてしまった。

あやつがおらぬ。そう、我輩の恋人であるレイだ。

お前がいなければ完璧にはならぬ。我輩は苦笑した。
しかしレイにも学生生活というものがあろう。友達との付き合いも大切だ。それなのに我輩のわがままでお前を呼びつけるわけにはいかぬだろうな。
それに昨日だってこの部屋で会っているのだ。
二人で甘い時を十分とはいえないが過ごすことができた。昨日のことを思い出し我輩は一人で赤くなってしまった。
あやつがあんなに可愛いからいけないのだ。
ああ、そのようなことを考えていたらお前に会いたくて堪らなくなってしまったではないか。昨日も会っているのにこの様だ。

本当にどうしようもないな、恋というものは。
心が、気持ちが、制御できぬ。



ああ、レイ…お前のその心地よい声が聞きたい。その声で我輩に愛を囁いて欲しい。我輩の心がときめき、愛しさで溢れるくらい。

お前のその潤んだ瞳で我輩を見つめて欲しい。その瞳は、我輩だけを誘惑するのだ。
お前の華奢な身体を思い切り抱きしめたい。
お前の恥ずかしそうな表情が見たい。そしてお前の、その緊張で震える唇にキスをするのだ。
そうしたらお前はきっととても驚いて、恥ずかしそうにするとおずおずとキスを仕返してくるはず。我輩は愛しさのあまりそこから先に進んでしまうだろう。
そうしてレイ、お前が耐え切れず根をあげるまで甘く喘がせてやろう。
我輩の腕の中で…。



我輩は切ない溜め息を吐いた。
ふっ…これでは読書どころではないな。
こんな妄想をしてしまうほど、レイ、お前が好きだ……。
ああ、レイ、お前に会いたい……。




レイの寮の窓辺に一羽のフクロウがやって来るのはその後の事。


この後、二人はどうなったのか?
それはまた別のお話…。


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